pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
ブルーとイエロー。少女とは。
やわらかな手が、湯気の立つマグカップを包み込んでいる。
まあるく膨らんでいる陶器のふちに、唇をつけるとミルクと蜂蜜の甘くてやさしい香りがする。少女の匂いというものがあるとするなら、これをそう呼ぶのではないかしら。そう思ってブルーは目を閉じる。
「雨、止みませんね」
目の前の少女が誰に言うでもなく呟いた。
そうね、とブルーはゆったりと応えながら、目を閉じたまま雨音に耳をかたむけた。さあさあ、しとしと。白い空から針のような雨が次々に地面に吸い込まれていく。足先から冷えていくのを自覚しながらブルーはマグカップに口をつけた。少し甘過ぎる、と彼女は一人ごちて、視線を上げる。
テーブルの向かいでは、少女が座っている。彼女の呼び名を、ブルーは他に知らない。ただ、彼女の長い金の髪が揺れて光るのを見るたびに、一種眩しくて見ていられないような心持ちになった。少女といういきものがどういうものなのか、ブルーはまだ知らない。多分、彼女がそれになることは一生ないのだろう。彼女にとって少女はあまりにも断片的かつ刹那的だったし、それに無益だった。
最初に何かを諦めたときから、どのくらい経ったのだろう。ブルーは今までに幾度となく盗みを働いたけれども、それ以上にもっとたくさんのものを諦めてきた。だから他の子供よりも少しだけ早く大人になったのだと思う。子供と大人の間に、もしも少女という時代があったならば、少女のあたしはどこにいったんだろう、と思うのだ。
それから、あの子の少女。
ブルーは瞼を開けて、目の前の少女を眺める。名前も知らない。嗜好も知らない。思い出もない。けれど彼女は確かに少女だ。いつかブルーが蓋をしてしまって以来、イエローという名前の子供の中から、まるで眠るようにいなくなってしまった。あの子の顔で、まるで女の子のように笑う彼女を見るたびに、ちくりと心を針で刺されるような気持ちになるのも確かだった。
数日前、ブルーは崖から転がり落ちたイエローを間一髪のところで助け出した。けれど頭を打った拍子でここ数年の記憶が抜け落ちてしまったらしいイエローは、ブルーのことを憶えていなかった。それから、ブルーはちょくちょく彼女の家を訪れては世話を焼いている。図鑑所有者の中でこのことを知っているのは、今のところグリーンだけだ。別に隠す必要もないのだけれども、単にタイミングが合わず、話す機会が無かっただけのことだった。
別に、大騒ぎするようなことでもないもの。言い聞かせるようにつぶやく。
命の危険に晒されているわけでもなければ、心因性の記憶喪失で元に戻るのが絶望的だというわけでもない。きっと何かの拍子に、おどろくほど呆気なくイエローは戻ってくるだろう。少し道草を食っているだけなのだ。今は。
「……雨は嫌い?」
少しだけ唇を緩ませてブルーは穏やかに尋ねる。その声は、まるで風のようなすがすがしさすら感じさせる、細やかな雨音に溶け込んでしまう。目の前の少女は首を横に振った。
「そんなことないですよ。このくらいの雨だったら、木の下で雨宿りしながら釣りをするのも気持ちがいいんです」
「ま」
節度を知らない妹を嗜めるように、ブルーは唇の端を上げる。
「女の子は身体を冷やしたらいけないのよ」
目の前の少女の顔色に影が差したのを見て、程々にしておきなさいね、と付け加える。すると少女は照れたようにはにかんだ。
まあるく膨らんでいる陶器のふちに、唇をつけるとミルクと蜂蜜の甘くてやさしい香りがする。少女の匂いというものがあるとするなら、これをそう呼ぶのではないかしら。そう思ってブルーは目を閉じる。
「雨、止みませんね」
目の前の少女が誰に言うでもなく呟いた。
そうね、とブルーはゆったりと応えながら、目を閉じたまま雨音に耳をかたむけた。さあさあ、しとしと。白い空から針のような雨が次々に地面に吸い込まれていく。足先から冷えていくのを自覚しながらブルーはマグカップに口をつけた。少し甘過ぎる、と彼女は一人ごちて、視線を上げる。
テーブルの向かいでは、少女が座っている。彼女の呼び名を、ブルーは他に知らない。ただ、彼女の長い金の髪が揺れて光るのを見るたびに、一種眩しくて見ていられないような心持ちになった。少女といういきものがどういうものなのか、ブルーはまだ知らない。多分、彼女がそれになることは一生ないのだろう。彼女にとって少女はあまりにも断片的かつ刹那的だったし、それに無益だった。
最初に何かを諦めたときから、どのくらい経ったのだろう。ブルーは今までに幾度となく盗みを働いたけれども、それ以上にもっとたくさんのものを諦めてきた。だから他の子供よりも少しだけ早く大人になったのだと思う。子供と大人の間に、もしも少女という時代があったならば、少女のあたしはどこにいったんだろう、と思うのだ。
それから、あの子の少女。
ブルーは瞼を開けて、目の前の少女を眺める。名前も知らない。嗜好も知らない。思い出もない。けれど彼女は確かに少女だ。いつかブルーが蓋をしてしまって以来、イエローという名前の子供の中から、まるで眠るようにいなくなってしまった。あの子の顔で、まるで女の子のように笑う彼女を見るたびに、ちくりと心を針で刺されるような気持ちになるのも確かだった。
数日前、ブルーは崖から転がり落ちたイエローを間一髪のところで助け出した。けれど頭を打った拍子でここ数年の記憶が抜け落ちてしまったらしいイエローは、ブルーのことを憶えていなかった。それから、ブルーはちょくちょく彼女の家を訪れては世話を焼いている。図鑑所有者の中でこのことを知っているのは、今のところグリーンだけだ。別に隠す必要もないのだけれども、単にタイミングが合わず、話す機会が無かっただけのことだった。
別に、大騒ぎするようなことでもないもの。言い聞かせるようにつぶやく。
命の危険に晒されているわけでもなければ、心因性の記憶喪失で元に戻るのが絶望的だというわけでもない。きっと何かの拍子に、おどろくほど呆気なくイエローは戻ってくるだろう。少し道草を食っているだけなのだ。今は。
「……雨は嫌い?」
少しだけ唇を緩ませてブルーは穏やかに尋ねる。その声は、まるで風のようなすがすがしさすら感じさせる、細やかな雨音に溶け込んでしまう。目の前の少女は首を横に振った。
「そんなことないですよ。このくらいの雨だったら、木の下で雨宿りしながら釣りをするのも気持ちがいいんです」
「ま」
節度を知らない妹を嗜めるように、ブルーは唇の端を上げる。
「女の子は身体を冷やしたらいけないのよ」
目の前の少女の顔色に影が差したのを見て、程々にしておきなさいね、と付け加える。すると少女は照れたようにはにかんだ。