pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
薔薇色の頬のブルーちゃんの話。
相変わらずの過去模造
相変わらずの過去模造
あのこは、とても幸福なこどもだった。長い茶色の髪はまだ色も薄くやわらかで、かしこそうな青い目をして、頬はふっくりして、笑ったりするときなど、透き通るような生まれたての皮膚を通して薔薇色が浮かび上がる。可愛らしい顔立ちをして、声などもまるで鈴がころころ転がるようで、ちょっとしたしぐさや、やることなすこと愛嬌に溢れ、愛情深く聡明な両親はもちろん、近所の人々やほかのこどもたちからもたいそう好かれるような、まるで幸せに生まれついたようなこどもだった。もっとも、こどもというのは誰しもが多かれ少なかれそういうもので、ただあの子の場合は、ほかの子らよりもすこしばかり愛らしくて、ほかの子らよりもすこしばかり両親に恵まれていた。たまのやんちゃすら可愛らしく、いたずらも誰の神経を逆撫ですることなく、いつものびのびとしていた。
「ブルー」
おだやかな声に名前を呼ばれて顔を上げる。色とりどりのクレヨンで指を染めながらのお絵描きに夢中だったけれど、そのときはなぜかすぐに気がついた。カレンダーを眺めていたらしい母親が、ゆっくりとこっちを向いて言った。
「クリスマスプレゼント、なにがいい?」
こんどの土曜日にお父さんに車を出してもらって買いに行きましょう。母親はにっこりした。ブルーはすこし考えた。考えたような気がした、だけかもしれない。
「ママ、あのね、あたし、おとうとかいもうとがほしい」
「あら。この間、うさぎさんの大きなぬいぐるみがほしいって言ってなかった?」
母親はすこし驚いたような顔をした。うーん、とブルーは小首をかしげる。
「……でもねえ、あたし、おとうとかいもうとがいいの」
「うーん、そうねえ」
母親はすこしだけ考えるような素振りを見せたあと、神妙な顔つきになって、言い含めるように口を開いた。
「でもねブルー、弟や妹はすぐに来てくれるわけじゃないのよ。神さまにお願いしないといけないの」
「すぐじゃないの? どのくらい?」
「そうねー…………だいたい一年くらいかな」
「いちねん! そんなにかかるの?」
「準備にいっぱい時間がかかっちゃうの。ブルーの大事なきょうだいだもの。だからそうね、次のクリスマス……六歳のクリスマスまでには、きっと来てくれるんじゃないかしら」
「えー、つまんないのー」
「何言ってるの、ブルーはおねえさんになるのよー?」
「えー?」
「おねえさんの練習、しなくっていいの?」
「あたしちゃんとおねえさんできるもん。しなくっても大丈夫だもん」
「あら頼もしい。そんなすてきなブルーおねえさんが練習したら、きっともっとすごいおねえさんになれるわねー」
このころ彼女はまだ天使だった。父母とともに歩むこの道こそが唯一で、いつまでも続くものと、それだけと思っていた。彼女はともに暮らす人々を幸せにした。彼女があまりにもこの先の未来を信じていたから、一切を疑おうとしなかったから、周りの分別ある大人さえそうなるような気にさせられていた。彼女さえいれば世界は幸福に満ち、人々は永久を感じることができた。
外側の人々、例えば彼のチョコレート・ウェハースの少女などは、飯事のように滑稽な演劇だと鼻で笑うだろう、彼女の見ている現実はほかにあるからだ。道徳は社会の基準に過ぎず、よって清廉潔白だとしても社会の中で報われるを期待するのがせいぜいだ。けれども社会的に報われることがどれだけのものなのか。この身に降り掛かる不幸せのうちのどれだけを補償してくれるというのか。父を亡くしたら、母が重い病にかかったら。そして彼女が何もしていないのに甘いお菓子を食べることができなくなったら、それは社会が補償してくれるのか。
それでも幸福な人々にとって幸福は真実である、不幸な人々にとって不幸が真実であるのと同等に。