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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
2026年06月22日 (Mon)
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2014年11月02日 (Sun)
カーツの物語。
かっこわるいカーツで申し訳ないです


 カーツ、シャム、イツキ、カリン。選り抜かれた子供達は、とある施設に寝泊まりしながら仮面の男のもとで修行を積んでいた。幼い二人の子供を拉致してから、仮面の男は子供達を二人一組とした。カーツはシャムと、カリンはイツキと。そしておそらく、名前も知らないあの不幸な子供達もふたりで組まされるのだろう。
 その日カーツは施設の廊下でばったりシャムに会った。戯れに、拉致された子供達の様子を見に行った帰りだったから、おそらくシャムも同じ目的だろうと思った。
「あの二人の様子は?」
 予想に違わず、彼女の第一声はそれだった。カーツは肩を竦めてみせた。
「相変わらず監禁状態だ。女の子のほうは泣いてた、小さいほうはポケモンと遊んでたぜ」
「そうか」
 シャムは平坦な声でそれだけ応えた。
 女の子は五歳で、男の子は二歳だと仮面の男から聞いた。ホウオウから聞いたのか、それとも本人たちに訊いたのか。まだ女の子はたまにしくしく泣いているのが見かけられるが、一番小さな男の子は最初こそ泣いていたが、もう大分この環境に順応したらしかった。
「カリンやイツキはともかく、お前に関しては冷やかしに見物に行くようなタマじゃないだろう。あの小さな子供達のことを心配しているのか?」
「私が新しく来た人間に興味を持ったらおかしいか」
「どうだかね。おまえは一人前に良心的だからな」
「馬鹿にしているのか」
「とんでもない。褒めているんだ」
 心にもないことを。溜息混じりにシャムは呟いた。
「……私があの方を裏切ることはないよ。あの方だけが私に答をくれた。私に私自身をくれたのだから。それは貴様もよく分かっているんじゃないか」
「そりゃあな。だが、良心てのは厄介なものだぜ。お前、あの方のしていることを疑問に思っているんじゃないのか」
 そう言って笑い混じりに指摘したカーツに、シャムは軽く顔を伏せた。
「……あの頃の残滓に過ぎない。植え付けられた道徳はいつまでも後を引く。お前にしても分かっているだろう、当たり前のことだ。……だが、それでも私は”裏切れない”。あのお方は正しい。いいか、正しいのだ。だからそのうちに全て忘れてしまうさ。世界の中で唯一、あのお方だけが正しいのだから」
「正しい、か……ご立派な大義名分だな、ご苦労なこった」
「……お前は違うのか」
「違うな——とはいっても裏切る気は毛頭ない、その点は同じだが。俺は正しいか間違っているかなんてどうでもいい、あの方に限らずだ」
「では何故」
 カーツは目を細め、一瞬だけ迷ったが、すぐに頭を振って歩き出した。そしてすれ違いざまに呟いた。
「俺にだって一応、自尊心というものはあるからな」
 シャムは立ち止まったまま、何も言わなかった。そしてカーツに遅れること数秒、彼と反対方向、二人の小さな新入りの閉じ込められているほうへと歩き出した。
 廊下の曲がり角の先まで歩き、シャムの姿が見えなくなると、カーツは溜息をついて壁に寄りかかる。話さなくて良かった。自分を褒めてやりたいくらいだった。
(……俺はただの臆病者なんだよ)
 誰にともなく、口の中だけで呟いた。
 彼は経済的にはごく普通の家庭で生まれた。ただ、父親は若い頃から優秀なポケモントレーナーで、ポケモンリーグ三位入賞の経験があり、母親は評判の育て屋で、ポケモンに関する数々の資格を持っていることに加え、トリマーとしては地域大会で大賞を取ったことがあった。言うなればサラブレッドであり、幼い頃から多大な期待をかけられて育った。塾で一番になれば褒められた。期待に応えられているという満足感があった。そして栄華は九歳にしてジュニア・グランプリ優勝という快挙を果たしたときに最高潮に達し……、次の年、七歳になったばかりの弟が同じことをやってのけたのと一緒に無くなった。地に落ちたのではなく、無くなったのだ。夢のように消えてしまった。それが全てだったのに。
 だから、シャムのように小難しいことを考えることが大切だとは思えない。かといってカリンのように開き直れもしなければ、イツキのように要領よく振る舞えもしない。彼にとってはどれも下らないことに過ぎない。けれどもカーツは、彼らにとってそれが全てだということを知っている。重要なのはそういうことなんだ、と彼は人知れず呟く。彼は、自分で何かしたいことがあって仮面の男についている訳じゃない。ただ逃げたいから……、あの日全てが無くなってしまったということを無いことにしたいから。褒められなくなるのが怖いからだ。口ほど自惚れてるわけでもなく、むしろ限界があることを覚えているからこそ怯え、自信を見せつけずにはいられないのだ。自分を安心させるために。
(だからこそ賞賛が必要なんだ……そのためには、マスクド・チルドレンであることが重要なのだ。あの方は俺を子供としてくれる。俺なんざ、まともに賞賛を得られる器ではないのだ……、子供でなければ。そしてあの方が去れば、俺は選ばれし者じゃなくなるのだ。またしても無くなってしまうんだ、自尊心も、賞賛も。本当は全部分かってるんだ)
 彼は今年、十七になる。それでも、マスクド・チルドレンだ。仮面の子供達のひとりだ。次の年も、その次の年も。きっと子供なのだろう。
 細く息を吐いて、彼は無表情に天井を仰ぐ。シャム、お前と違って。
「おれは本物のくそやろうだよ、なあ」
 そうだろう?
 消え入りそうな呟きは間もなく影に溶けて消えた。それでいい。見えなくていいものだから。分からないままでいなければならないことだから。
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