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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
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2014年10月25日 (Sat)
セレビィのことを知ったときのヤナギ独白


 何をもってしても満たされぬ。あの日失ったものが入っていた容れ物は満ちることを拒んでいる。割れたグラスのように、容れた先から零れてゆく。いっときとして留まることもない。ほとんど底が抜けているといっても良いくらいだった。
 一月が過ぎ、一年が過ぎ、やがてもっと長い時間が過ぎた。その間、幾度となくこの不毛な心の働きを止めようと試みたかわからない。己によって責められ続ける辛さに耐えきれなくなり、失った命のことも罪のことも何もかもまるきり忘れて、ただ繰り返される螺旋運動から逃れようともがいてみる、実際に苦痛を感じているのだからすぐに止められるだろうと思っていたのに……、中毒のように止めることができなかった。まるでこの苦悩を、中毒のように止められないことによる嫌悪すらも、己自身が愉しんでいるかのように、生活から引き剥がせない。そうこうしているうちに、だんだんと、この底意地の悪い責め苦を手放すのがこわくなった。こうして自分を責めることを止めてしまったら、何をして生活したらいいのだろう。数年に渡って己を責め続けた己はどこに行ってしまうのだろう。止めてしまったら、この数年はいったい何になるのか。この数年を経て存在する己は何になるのか。割れたグラスと同じように。穴が空くのか。虚ろか。
 いつしか諦めていた。一生己を責め続けて生きて行くのだと思うようになった。やめようとする努力も馬鹿馬鹿しくなって、止めた。
 セレビィのことを知ったのは、その矢先のこと。ほんの偶然に過ぎなかった。親が亡くなり、実家の書棚の整理をしていたとき、古い雑誌の表紙の謳い文句が目に留った。
——ときわたりポケモンによってパラドックスを起こした偉人たち
 ときわたりポケモン? 所謂タイムパラドックスというやつか。
 ひどく古いその雑誌は、確か父が昔読んでいたものだ。都市伝説の類のやたら胡散臭い情報ばかり載っていて、とうに廃刊になった記憶がある。もちろん、それを目にしたときも男は殆ど動じなかった。彼はこの雑誌の九割は眉唾物だと思っていた。それでも手を伸ばしたのはやはり、もし時間を越えられるのならば自分の抱えている問題も、きれいに解消されるだろうと思ったからだ。期待は露程もなかったが、単純な好奇心をあえて無視する理由もなかった。
 内容は、歴史上で偉大な発明をした人物のうちの数人は、実はときわたりポケモンの力を借りて未来から来たのだ、という説を挙げ、具体的に誰がどうこうというのを説明している。矛盾は無いが、根拠も推測の域を出ない、と思った。
 それでも、心のどこかに引っかかるものがあったのだろう。実家の整理を終え、どうせやることもないのだから……と、男は図書館に出かけ、”ときわたりポケモン”について調べてみると、思いの他多くの資料が見つかった。偉い博士の論文に行き当たり、そこには"ときわたりポケモンは実在する”という記述があった。日付は数年前にあたる。男はすっかり世間と接触を断ち塞ぎ込んでいたから、おそらく知ることができなかったのだろうが、"ときわたりポケモン”の実在は既にひろく知られていたらしかった。
 ときわたりポケモンがいれば……、全てが解決するかもしれない。男はそう思ったが、長年の苦痛が感覚を鈍らせていたのかもしれない。ただ夢のようで、その方法はなんだか地に足がついていないように感じられた。しかしともかくも、男はその論文を借りて帰ることにした。僅かばかり興奮していた。予感じみたものを感じていた。
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