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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
2026年06月22日 (Mon)
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2014年11月01日 (Sat)
六人揃った


 セレビィの出現周期に合わせて、子供たちを集め始めた。最初に目をつけたのは、ジュニア・グランプリの歴代優勝者だった。全国大会と銘打っておきながら、参加者はほぼ学生のみであることから、業界の裏では温い大会と称されることも少なくない。周りに褒められ慣れているにも関わらず賞賛を受けられなくなり、喪失感を感じている子供を狙った。何せ環境が整っていない。非協力的な子供を扱うのは危険すぎた。
 一人目は犬。若干八歳にしてジュニア・グランプリで優勝した経験がある。十歳のときに弟子とした。拉致というよりは、半分は本人の同意の上で誘拐したといったほうが近いだろう。年齢はギリギリだったが、天才肌で実力も高く、やや感情的なところはあるものの、まさに狙い通りの子供だった。周りに尻尾を振っていたのに、幼い弟が同じように才能を開花させたことにより、賞賛を得られなくなり、それどころか得ようすることさえ罪悪のごとく扱われ、にも関わらずどうすることもできずに燻っていた。鼻っ柱だけは強かったが、一度へし折ってやれば平伏した。
 二人目は猫。同じく、グランプリにて同じく八歳で優勝した。気が強そうでいて賢そうな顔つきと、緻密な戦術が気に入った。彼女は優勝直後、少年と同じ手法で誘拐した。彼女の家の持つ社会的地位はジムリーダーと同じく諸刃の剣だが、彼女なら上手く操るだろうと判断した。完璧主義で神経質、一人目と対照的な性質も興味深い。組ませてみるのも面白いだろう。彼女は周りの大人たちが幼稚であったことに失望し、自らの存在価値を求めてやってきた。一見疑い深く慎重そうだが、欲しいものを与えてやればすぐさま懐いた。
 続いて凶悪な鼬が二匹。三人目、親をなくして孤児院で育てられているものの、夜もろくに帰ることがなかったという。二人目を育て始めて五年が経ち、ようやく自宅を本格的な施設として改装し終え、そろそろ三人目を考え始めた矢先。彼女は十歳のときに、公園で遊んでいた他の子供のポケモンに手持ちのイーブイで攻撃を仕掛けていた。これがなかなか筋が良く、数年教えれば化けるかもしれないと思い、後ほど仮面の男として接触した。何より特筆すべきは突き抜けた快楽主義と崩壊した道徳心だ。一度築き上げられた後に崩壊した道徳は、元より与えないよりもむしろ頑なだ。邪魔と思えば男すらも容赦なく排除するだろう。けれども単純な思考ゆえに操るのは容易いと判断した。楽しいことを与え続ける限り、彼女は決して男のもとを離れることはないだろう。そして四人目、裕福な母子家庭で育った。三人目がいたく気に入っている友人を連れてきたいと言い出した。まだ三人目の気性を判断しかねていて、たまに人気のない山奥で指導するに留めていたので、会ってみるだけならリスクはない。七歳という年齢のわりに計算高く気難しそうな目をした子供だったが、あの気違い染みた鼬の友人だけあって、将来有望だった。最初こそ物わかりの良いような顔をしていたものの、警戒心が解ける頃にはすっかり様変わりして、何にでも笑う、奔放な側面をあらわしはじめた。快楽主義であるものの、物事の分別を持っているのは悪くはない。
 偶然にも、子供達の年齢は三歳とびになっていた。男としては、仲間意識や連帯感を持ち難いよう、ある程度年齢が離れていれば何でも良かったのだが。そして今日、ようやく本丸が来る。もっとも男が期待し、完全に育て上げるべき人材——五歳以下の子供がふたり。これまでの四人はある程度の能力があれば良かった、むしろいざというとき、どうにでもできるように、適正な能力というものがあった。選び出すために、偶然による要素も決して小さくはない。けれどももっとも幼い子供たちは最も才能に恵まれていなくてはいけない。彼らは補償するものだ。だからこそホウオウを使った。たくさんの子供達を攫ったが、男の眼鏡にかなうものはなかなかいなかった。
「今度来るのはいつまで持つかな〜?」
 もうすっかり打ち解けた——本性をあらわした、四人目のイツキが笑う。だいたいにおいて口火を切るのはこの少年だった。
「カリン、イツキ。新入りにちょっかいをかけるような真似は控えろ」
 対し、二人目のシャムが釘を刺した。おそらく四人の中でもっとも常識のある彼女は、二人の奔放さと残虐性には飽き飽きしているといったところだった。蜘蛛の足を引きちぎるような真似の大好きな、到底彼女には理解できない悪趣味な連中なのだ。とはいえ人の趣味に口出しする気はないが、聡い彼女はホウオウによって攫われて来る幼い子供達が多大な期待をかけられていることを感じ取っていたのである。
「アハッ、イツキはともかくあたいまで疑うわけ? あたい、なーんにも言ってないのに!」
 三人目のカリンがけらけら笑うが、それに対するシャムの反応はなかった。自分の胸に聞いてみなさいという台詞が通用するのはせいぜいイツキ、カリンに至っては言って聞かせても分からないのが目に見えている。ふたりともまだ八歳と十一歳、自分を抑えることのできない年頃である。
 そのとき、彼らのやりとりなどどこ吹く風で空を見上げていた一人目のカーツが、不意に声を上げた。
「見ろよ、帰って来たみたいだぞ」
 夜空の向こうから巨大な鳥の影が薄らと見え始めた。それを眺めながら、男は不意に、月も星も無ければいいと思った。そうすれば何もかもが隠されて存在しなくなる。そして隠すための黒に守られている、氷の身体だけが存在することを男は知るのだ。氷の身体は夜を纏い、暗い夜はなにものも入り込むことを許さない巨大な黒となる。そしてただひとつ贖罪だけが世界に残されるのだ。
 ふと、月明かりが遮られたことに気付くいて我に返ると、目の前にホウオウが佇んでいた。子供は。そう思って足元を見ると、ひどく怯えた様子のふたりの子供が踞っていた。
「逃がすな」
 男は短く、周りの子供達に命じると、ホウオウに向き直った。
「この子供たちはどこで見つけた?」
——少女はマサラ、少年はトキワの森
「……トキワの森?」
 トキワシティならともかく、あの森に住民などいるのだろうか。怪訝に思ったが、まあいい、と二人の子供に仮面を付けることにした。
 女の子供。いかにも健康そうな、愛らしい顔立ちをしていた。今までの四人とはまったく異質な雰囲気。恐怖に引きつっていても、そうとわかるほどふっくらとした頬、それがなぜか腹立たしく感じた。
 男の子供。まだ言葉を覚え始めたばかりの幼児のようだ。年齢のためだろうか、体格は頼りなく華奢に見えた。赤みの強い髪、色素の薄い銀の瞳の組み合わせは珍しい。震えながら、おとうさん、と祈りのように繰り返すことしかできないようだった。
 ほのかな甘いにおいが鼻先を掠めて不快だったが、仮面をつけてしまえばそれも無くなり満足した。明日になればこの子供達は親によって探されるだろう、そして見つからないだろう。社会から抹消される。整然と並んだ完璧な社会の中で、この二人の子供だけが抜け落ちる。男が失った二つの命と同じように。二人の子供がいた場所は穴が空く。うつろになる。たとえば彼らと同じはずの何千何万という子供たちがビニル製のテープによって覆われ、虚ろの黒色に塗りつぶされるのを免れたというのに、ほんの偶然、本当にちょっとした気まぐれから、守られなかった。ビニル・テープが他の子供たちを呑み込もうとする黒をはじくのを横目に、彼らだけが果てのない虚空に溶け込んだ、男の深淵へ。
 そして男は、彼らをマスクド・チルドレンと呼んだ。
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