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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
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2014年11月07日 (Fri)
シャムの疑念


 彼女にとって、物事の判断基準は一つだけ。即ち、正しいか、正しくないかだ。すべてのものがあるべき姿のまま、一片の矛盾もなく噛み合ってまわっていれば安心することができた。仮面の男は彼女を彼女として扱ってくれる。幾つになろうと、仮面の男の前では彼女は彼女のまま、双方の間に認識のずれは生じない。だからこそ仮面の男は、少なくとも自分にとっては正しい存在であると彼女は判断した。
 仮面の男はいつだって彼女の判断を気に入っていたはずだ。冷静で、理性的で、意図を鋭く汲み取った措置。そうだ、小さなこどもたちが脱走した、あの夜までは。むろん、彼女とて万能ではない、だから判断をしくじることがあっても、仮面の男に叱責されれば何が悪かったかが分かった。そして同様に、仮面の男の判断も、彼女は理解することができた。その理由までも予想することができた。
(あの方が、私たちの誰に対してよりも、逃げだした二人にこそ期待をかけていたのは間違いないはずだ……、それなのに何故……)
 理由を問うても、答は得られなかった。こんなことは初めてだった。困る。理由がなければ、正しいことを確信できない。揺らぐ。揺らぐ。
(大勢の子供たち、子供の私、大人の私、そのどちらでもなくどちらでもある、”私”が選ばれたのだ。ほかでもないこの”私”が、あのお方によって、全ての私の中から掬われた)
 彼女は身震いした。考えたくもない。もし、仮面の男が正しくないとしたら、彼によって選ばれた彼女、彼女自身はいったい何だというのだろう。十年の歳月を経て歩き続けた”私”すら幻だとでも?
(そんなことは……許されない。許されるはずがない)
 彼女はこの出来事を忘れようと決めた。深く考えてはいけない。一刻も早く蓋をしなければ、疑いはみるみるうちにまっさらな真実を食い破って頭を覗かせる。頭の中に巣食うおぞましい蟲どもは、滑らかで傷一つない、正しい世界に……”私”に穴を空ける。食い潰す。それでもまだ間に合う。十年にたった一度の猜疑なら、時間が経てば夢と紛うほどになるだろう。だからこれ以上考えるな。心に刻んではいけない。仮面の男はこんな風に考える子供は必要としない。彼が望むのは分別よりかは妄信。彼の望みのままに選ばれた”私”は彼を疑いだしたら最後、崩れ落ちてしまう。十年間の月日が消えてしまう。残されるのは、何ひとつ持たない、迷子の小娘だけだ。
 廻る思考が停止する直前の脳裏、ふと、あの日逃げだした、薔薇色の頬の少女が浮かんだ。
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