pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
ラ・プリスとラ・プルスを死なせてしまったあとのヤナギさん
こどもはいい。指先に摘んだ木の実を追って首を伸ばすラプラスの子を愛でながら、男は呟く。開きたての瑞々しい眼は目先の食物だけを映す。ただ生きるべく。生を謳歌している。自ずから何かを獲得することができない無力。無垢な魂ならば掌に閉じ込めてしまうことさえ容易。逃げ場をなくした掌を舐めるように木の実を食べ尽くしたラプラスの子は、楽しそうに掌に頭を擦り付ける。無邪気なものだ、この手が己が両親を奪ったとも知らずに。如何に世の中が悲しみに溢れていようとも、見えなければそれは無いものだ。お前はこの掌の中で生きていけば良い。何も知らないまま、掌の中に収まるだけの悲しみと喜びと。
疑うことを知らないラプラスの子、罪に染まった掌に守られながら愛を歌う子。無知なこどもはこの穢れた手すら揺り籠と謳うだろう。黒をも白と信じるだろう。そのとき男はその子の神となり、子のすべてを見通すだろう。しかしそうなれば誰が男を裁くのか。誰が男の罪を糾弾し、責め苛んでくれるのか。かつて男は過ちを犯し、その過失を告白した。されば誰かが裁いてくれると思っていたのに、男の罪は大いなる憐憫と同情によって赦されようとした、それが許せなかった。これでは、赦されたいがために罪を告白したようなものだ……。仮令彼に一片としてその気が無かったとしても、世間は彼に同情を示したという事実が、疑念の入り込む余地を作り込む。罰されるためだけの、清廉な告白だった、その筈だ……本当に? 罰されるためというのは建前で、実のところ優しさを期待してはいなかったか、同情を、赦しを期待する心は無かったというのか、ほんの一欠片も? 誰もが口を揃え、仕方のないことだったと宥めようとするのを聞きながら、心の底では憤怒が煮えたぎっていた。どうして誰も、この手が屠った彼らのために断罪してはくれないのだろうかと。本当は分かっていた、裁いてはくれないという理由で誰かを恨むのは筋違いだということも。しかしそうだとしても許せなかった。あの日失われた二つの命が軽んじられているようで。誰も彼らのために怒ってくれないというのならば、己で怒ろう。誰もがあの過失を赦すというのならば、己だけは決して赦すまい。誰も責めないというのならば、己で己を責め苛めば良い。
罪は問われるべきだ。男はそう思う。ラプラスの子と、自分しかいない部屋の中で。お前は何も悪くはないのに、両親を奪われたんだものなあ……。あまりに幼いラプラスの子が、両親の名も与えられぬままその身に降り掛かった不幸を理解しないにしても、罪は罪としてここにある、男の傍らに。褥の恋人のように。