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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
2026年06月22日 (Mon)
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2014年10月22日 (Wed)
小さい頃のカリンとイツキについて本気出して考えてみた
完全に妄想です、ご注意ください


「はい、母上」
 つまらない人生だ。頬の筋肉を器用に動かして、愛想の良い微笑を浮かべる片隅、そう思う。あなたはイイコね、なんて手がかからないのかしら、ご褒美におやつはあなたの好きなチョコレート・ウェハースよ! ありがとう母上、大好き! 外行きの洋服を汚さない程度にそっと抱きつけば満点。家の前から走り去る車を見送りながら、この遊びにもほとほと飽きてきたと、少年は溜息をつく。
「”はい、母上”だってさ。相変わらずお人形さんみたいだね」
 揶揄うような声色に振り返ると、茂みの中でうつ伏せになり、頬杖をついた年上の少女が、上半身だけを覗かせてニヤニヤしていた。少年はすこし辟易して言った。
「なんだ、カリンか」
「なんだは無いんじゃない」
「チョコレート・ウェハース食べる?」
「食べる、でもあんたのおやつじゃないの」
「うん、だけど別に好きじゃないから」
「ふうん、それじゃ遠慮なく」
「よく言うよ」
 どうせ家にはもう誰もいない。少年が背を向けて自宅の扉を開けると、すっかり慣れた様子で少女がその後に続いた。足の裏だけは拭いてよね、というのは少年がいつも口を酸っぱくして言っていることだ。少女は裸足に履き潰したスニーカーであちこち歩き回ってはやんちゃを起こすから、その靴の中はいつも砂埃だらけだった。
 玄関で待っていた少女は、少年からウェットティッシュを差し出されると、まず上げた片足を拭いて廊下に乗り上げ、もう片足からもスニーカーを落とし、同じように膝を折り曲げて拭いた。
 二人はキッチンに入ると、少年のほうがダイニングチェアを踏み台に戸棚を開け、その中からチョコレート・ウェハースを探し出した。彼の腕いっぱいもある丸い缶に入っている。蓋の上では最早見慣れたテディ・ベアが笑っていた。彼の名前はエドワード。いつも笑顔を絶やさない、自称子供たちのともだちだ。少年が四歳の頃、この菓子に大喜びしたときから、事あるごとに母親が土産と称して買ってくるからだった。とはいえこの近くのデパートのお菓子売り場で同じ顔をした大量のエドワードが微笑んでいること。聡い少年は知っている。
「アイスティーも飲む?」
「気が利くじゃん」
 缶の中からウェハースをつまみ上げながら、少女がころころ笑う。少年は溜息をつきたい気持ちを抑えて冷蔵庫を開け、琥珀色の紅茶の満ちた水差しを取り出した。別に少女の態度が嫌になったわけではなくて、ありとあらゆるものに対して、溜息をつきたいような気持ちだった。
 二つのグラスに氷を満たして紅茶を注ぎ、ダイニング・テーブルについた少女に差し出してから、少年も同じように椅子に座った。
「……ね、あんたさ、あたいのこと好きなの?」
 不意に少女がにやついて言った。
「別に」
「だって、あんたいつも、あたいに良くしてくれるでしょ」
「よく家に来るからだよ」
「じゃ、あたいじゃなくっても、こんなふうにするっていうの?」
「だろうね。なんでもいいんだよ、このくそ忌々しいチョコレート・クリーム・サンドを食べなくて済むんだったら」
「くそ忌々しいだって!」
 揶揄うように少女は笑った。
 今日もやはり、少女はよく食べた。さも美味しそうに頬張ったチョコレート・ウェハースをアイスティーで流し込んで一息、彼女は口を開いた。
「今週のバトル・トーナメント、あんた行くの?」
 少女が言っているのは、町内の子供達だけで開かれる、月に一度のポケモンバトル大会のことだった。大人たちもちらほら観に来るとはいえ、主催は子供達だから、優勝したところで景品はない。少し前までは少年も参加していたのだけれども、いま家に招いている少女を除いて、彼に勝てる子供はいなかった。少女が参加していれば準優勝だし、していなければ優勝。決まりきった展開にはもううんざりだ。ちやほやされるのは嫌いではなかったけれど、褒め言葉も尽きれば聞き飽きるし、同年代の子供達の嫉妬も面倒くさい。彼は年齢に似合わぬ強さを持て余していた。行かない、とあっさり答えた少年に、少女は、なんで、と首を傾げた。
「つまんないよ。みんな弱くってさ」
「みんなあんたのことを心待ちにしてるって言っても?」
「冗談。だいたい、カリンだって最近行ってないくせに」
「あれ、知ってたんだ?」
 少女はふいに意味深な笑みを浮かべた。どことなく、そこに嘲りの色を感じ取って、友達だって他にいないわけじゃないと少年は心の中だけで反論する。たまに喋って、カリンが最近来ないと教えてくれるくらいの友人はいる、のだ。
 少女は戯れにウェハースを分解しながら、何やらふふんと得意げに笑った。なんだかもったいぶっているようで、気持ちが悪いと少年は眉を寄せる。
「あんた、最近ぜんぜん笑わないもんねえ。……じゃあさ、面白いことする?」
 ニヤリ、少女が笑う。
「……面白いこと?」
「ふふっ、あたいも一月前から行ってるんだけどね。最っ高にイカしてるんだ、あんな子供のお遊びなんて目じゃないよ」
 冷めた少年はその誘いを一蹴していてもおかしくはなかった。けれど、少女の愉しそうにぎらついた眼差しが気になって、少年は頷いた。
「よっし決まり! アハハッ、良かった、あんたを連れてくって言っちゃったからさあ、断られたらどうしようかと思った!」
「……ボクを? 誰に?」
「そ! じゃあ決まりね、明日行こう! ただちょっと遠いから、朝から出発しても帰りは夜六時頃になるよ。母上にはうまく言っとくんだね」
 少女は上機嫌に、二つに割ったウェハースの一つを少年の口に突っ込むと、もう一枚を咥えて勢い良く椅子から立ち上がると、風のように駆け出して行ってしまった。残された少年は、溜息ひとつで砂糖のかたまりのようなウェハースを咀嚼して胃の中に落とし込んだ。
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