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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
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2015年03月17日 (Tue)
リクエスト「サカシル親子救済小説」
シルバーのお母さんとかいろいろ、模造しております


 いろいろなものが少しずつ、変わって行くのを感じている。今まで見えなかったものが形をとって、意識の中に根を下ろして行く。寒いという感覚。痛いという感覚。憤り、それから。春と夏と秋と冬と、風、ひのひかり。夢、クリスマス、誕生日。ねえさんの言葉たち。絵に描いたみたいに実感のわかない、たくさんの素晴らしいものの数々。彼女の語る言葉の中で、手が届いて、じかに掴むことができると感じたもの——復讐。曜日の感覚は、タウリナーを観にゴールドの家に通い出してから自覚するようになった。テレビを観終わってゴールドの家を出る道すがら、またはそれから朝を迎えるたび、数える。火曜日、水曜日。あと五日、あと四日だとか思う。タウリナーは日曜日。それが曜日ってもの。言葉だけが反乱して、語られる現実味のない世界だけがぐんぐん広がって、置いていかれまいと唯一手の届いた復讐によって、世界と、ねえさんと繫がれていたあのころ、語られるがままにしていた言葉の代償に、口を開けたまま閉ざされることのなかった空虚は、すこしずつ埋められつつあって、それでもその多くが、未だ満たされることを求めて喘いでいた。コンプレックス。ある側面では、そう呼ぶべきものじゃないかと、グリーン先輩が言っていた。その俺の臓とも呼ぶことのできる空洞が、いまこの日々によって満たされつつある。いまになってこれほどたくさんのものを知らなければならなくなるなんて、思ってもみなかったけれど。
 日々を重ねていくにつれて、口にする言葉の数が増えていく。言葉は着実に数を増し、日々の密度を濃くしていく。このまま進めば、埋め尽くすほどになるだろうか、とても想像はできないが。新しい言葉はいつも、閉ざしていたとばかり思っていた口からいつの間にかこぼれおちる。目の前に転がったそれを見つけてはじめて気がつく。何もないと思っていた場所に透き通ったがらすを見つけたり、夜の小径の暗がりの中でふいに虫が光り出し、細い葉が青く透かし出されているのに気付いたときに似ている。それらはあるときとつぜん形をとって、次第に、意識の中に根を下ろし、定着し、やがては同化する。
 たぶんそんなふうに思っているのは、俺だけじゃなく、あの男にとっても同じことらしいことも分かってきた。ものごとから長いこと離れていると、だんだんと思い出せなくなるのだと言った。だからここに来てから少しずつ昔のことを思い出しているのだとも。
 こんなことがあった。ここに来て以来、森で自由にさせている手持ちのうち、マニューラだけは夜九時ごろに戻ってきて、俺のベッドの下で丸くなって、大人しくしている。だが、それからマニューラは、俺が眠ってから一、二時間ほどしてようやく眠りにつく。そして朝は俺よりも遅い。これまで彼は俺に合わせて、昼間起きて夜眠る生活をしていたのだったが。俺はその変化を、バトルもせず一所に定住するこの生活をはじめ、本来の活動時間帯——マニューラは夜行性だ——に戻りつつあるのだと思っていた。
 だが俺は、彼が深夜二時に眠るようになってから、それ以上遅くならないらしいことに気付いて不思議に思った。夜行性のポケモンからしてみれば、活動に最も適した時間帯には違いないのに、マニューラは二時にはきっかり眠り、昼十一時にのんびりと起き出してくる。夜、戻ってきたマニューラを撫でながら、俺がそのことを話したら、ちょっと驚いたような顔をしてしばらく、「ああ思い出した」と言って、続けた。俺のお母さんの話だった。
「あれも夜型だったんだ」
 笑いを堪えるような顔で、そう口火を切った。
「眩しいからと言って、陽射しが嫌いでな。朝なんか布団を頭まで被って寝ていたものだ。身体も強くなかったものだから、たっぷり半日近くは寝ていたんだ。昼の一時ごろになってようやく目を覚ましたときの有様もまた酷かった、寝起きも相当悪かったんだ。ニューラはあれの世話係兼話し相手で、あれが眠ってから寝て、あれの起き出す一、二時間に起きて、食事の用意やらをしていた」
 そのときの習慣がまだ残っているのかもしれないな、とか言っていたが、俺はあんまり驚いて、正直それどころじゃなかった。
「……え……、ニューラ、って」
 ああ、まだ話していなかったか。と言う。
「今は、もうマニューラだったな……そうだ。あいつが唯一持っていたポケモンだった。最もあいつは、癇癪を起こしてボールから逃がして以来、ボールも持っていなかったので、友人といったほうが正しいのかもしれないが」
 と、ついに堪えきれなくなったらしく、笑いをこぼしながら付け加えた。……癇癪だって?
 ブルーねえさんから聞いていた母親や、ゴールドの母親のイメージとはずいぶんかけ離れたその単語に思わず言葉を失った。思わずマニューラを見たら、彼はふしぎそうに見返してきた。それは、何か含み笑いをしているようにも見えた。
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