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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
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2015年04月11日 (Sat)
リクエスト「サカシル親子救済小説」
シルバーのお母さんとかいろいろ、模造しております


10月14日
“あの人がお土産を持ってきた。仕事仲間だっていう人の手作りらしいの。うまいから食ってみろだなんて言って、全くとんでもなかったわ! ミートパイなんだけど、肉はぱっさぱさで味付けも塩だけ。まずくはないけどその一歩手前じゃないの。言ったらとぼけた顔してた。味覚おかしいんじゃないかしら?”


 一番古い記憶、仮面の男の修行施設を訪れた。俺は、それがどこにあったのか憶えていなかったけれど、少し前、ヤナギが生きていたことを話したときに、偶々ねえさんから聞いていた。施設と外界を遮断するコンクリートの塀の外側は半ばまで蔓に覆われていた。門を潜り、内側にまわってみてみると、こっちのほうは蔦が自生することもなく記憶にあるそのままの形で残っていた。その塀には細い継ぎ目のような模様があって、また当時にはもう古びていて、ところどころが黒ずんでいたり色褪せていたり、ふしぎなグラデーションだと感じていたことを思い出す。いつ、どういった状況でこの塀を見ていたのかは思い出せないけれど、この塀への印象と、塀を見ていたときの地に足のついていないようなふわふわした気分だけは、断片的に思い出すことができた。俺はこの塀を見ていた。外で修行していたときだったろうか? そうだねえさんは、あの塀をあまり意識しないように努めていたので、少なくともねえさんと一緒に見ていたというのではないだろう。隣に誰かいたろうか? 思い出せない。塀は今の俺の背丈であれば苦労せずに乗り越えられる程度の高さだが、あの頃はただただ高かった。最も、越えられたところで施設全体に見えない壁が張り巡らされているので、脱出は無理だったんだ。一度イツキがネイティで塀を飛び越えようとして、見えない壁に思い切りぶつかったことがあった。あいつは頭はそこそこでも生粋の馬鹿だったからな。建物内に入る。さらわれてきた当日も、おそらくこの正面口から入ったのだろうが、やはり憶えがない。間取りはよく思い出せないながらも、見回してみれば、最も見覚えのある扉や廊下が目につく。そして何となく進むと、自分がいつもの道筋を選んでいることに気付く。だけど全く違う印象だった。あの頃通路はもっと広かったし、ロビーのソファはもっと大きかった……いや、そんなひとつひとつってわけじゃなく、全体として、なにもかもが大きかったんだ。いま、俺の目に映るのはただの廃墟。打ち捨てられて誰にも使われなくなり、何なら今晩の宿にしていいくらいの——と考えたところで、思わずとなりのマニューラを窺っていた。同じタイミングで目があって、笑いたくなった。「ここに泊っていこうか」と俺は言って、かれも少し遅れて頷いた。まさか同じことを考えていたなんてことは、ありはしないだろうけど。
 少なくとも記憶の中に残っているこの場所は、こんなに味気ない、単なる廃墟ではなかった。恐怖もあったし、怒りもあった…………けれど一番感じていたのは……なんだろう。圧迫感。抑圧。重苦しさ。なによりも支配。言葉にするのが難しい感覚だったけれども、まるで人でない、俺たちじゃ太刀打ちできない化け物の中にいるみたいだった。当時、それは仮面の男によるものだと俺とねえさんは感じていたけれど……もちろんそれもあったのだと思うけれど、多分べつのものもあった。そのべつのものというのは、もっと強大だった。俺たちだけでなく、おそらくは仮面の男——ヤナギ自身すら呑み込んでいたものがあったんじゃないかと。今でこそ憑き物が落ちたようになって、泊ろうという気も起こるのだが、あの化け物の中にいたのじゃ、てんで休まる気もしなかったろうと思う。もともと俺たちが使っていた部屋で、夜を越すことにした。パイプベッドは大人用だったから、今でも広さはじゅうぶんだった。俺たちが逃げだしたあとの、この部屋はどうだっただろう。誰かほかの子どもが入ったろうかとふと考えた。どうでもいいことだが。うちのベッドはもっとあったかかったわとねえさんは言っていた。ここだとどうも寒くてと首を傾げながら。ベッドこそ安っぽかったものの、布団は分厚くてふかふかしていたので、俺はそうは思わなかった。いっしょに寝てあげるねと言ってねえさんが布団に潜り込んできたときもあった。そうでない日はニューラが布団の上で座って、けれど布団の中には入ろうとせずに、じっと俺を見下ろしていたりもした。そんな他愛もないことを考えながら、することもないのでベッドに入った。するとマニューラがそっとベッドによじ上って、いつかのようにきちんと座って俺を見下ろした。暗闇の中でふたつの紅色の目がひかっていて、俺は、その顔つきが悲しそうだったことに驚いた。「そんな顔をしていたのか」おもわず尋ねていた。マニューラはなにもいわなかった。俺が憶えていなかっただけで、彼はずっとこんな顔をしていたんだって、そんな気がしたんだ。俺は上体をおこして、つられたように顔を上げたマニューラに、ごめんって言った。マニューラは、なにもいわないで両腕を俺の胴にまわして抱きついてきた。俺の知らないところで、俺の知らないことを。彼はずっと考えこんでいる。でも俺は知らなかった。これからも、たぶん知らない。ワタルさんに聞けばわかるかもしれないけど、わからないままでいい。俺たちはそれぞれに、何時かの残滓を舐めて生きている。


12月17日
“昨日からあの人の仕事仲間だっていう女の人が泊まり込んでるの。赤ちゃんを産むのを手伝ってくれるんですって。しかも私のことを従妹だって言ってるらしいの。その人、あたしをひと目みるなり、「偏屈ね」って言ったのよ。嫌な目つきもつけてね。だから私が頼んだわけじゃないわよって言い返したの。仲良くはできなさそうだわ……”

12月20日
“今日もあの女と喧嘩しちゃった。だけど彼女、なかなか口がうまくって退屈しないわ。あたしが言ったことを二倍にしてやりかえしてくるの。あの人は、あたしもあの女も気が強くって似ているなんて言って笑った。冗談じゃないわね。”

12月24日
“ああ 神様 感謝します”

12月25日
“あの女、昨日私が眠っているうちにさっさと帰っちゃったらしいの。手紙を書きたいからって言って、私、あの人に名前を教えてくれるようにいったの。あの女、キャリーっていうんですって。素直に教えてくれたところをみると、私はもう長くないように見えているらしいわ……あの人にすらわかっちゃうのかしら。ああだけど、出来るから彼女から直接聞きたかった。最後まで憎まれ口ばかりだったけど、私なんかに気を使ったりしない率直なところは本当に好きだった。だからもし元気になったら、手紙を書くわね。もし元気になったら……”

12月27日
”今日は朝からとても気分がいいの。今日ばっかりは私、みんなが好きだわ。あの人も、キャリーも、病院も、私の両親や親戚の人たちも。私はよく腹を立てるし、気がかわりやすいし、人を見下して笑ったりもするけれど、いまは私が世界の中で一番悪い人間で、こんな私にみんなが優しくしてくれているような気持がするの。世の中のわるいことが、みんな私のせいにならないのはなぜなのかしら。私以外のだれかれもが責められるくらいだったら、私がぜんぶそれを受けたほうがよっぽど苦しくない、そういう気分なの。それでね、私……今日はとっても気分がよかったから、きっとよくなると信じてるけど、でもほんとうにもしものときのために、ニューラに坊やのことをお願いしたの。ニューラは誰よりも優しくて、私のことを好きでいてくれるから、きっと私のかわりにあの人を見ているだろうし、坊やのことも世話するだろうと思うの。あなたが、もう大丈夫って思えるまで、傍にいてあげてほしいって、あとそれから、坊やが大きくなったら、この日記のことを教えてほしいってことも……”
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