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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
2026年06月22日 (Mon)
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2015年02月05日 (Thu)
リクエスト「レッド/グリーン/ゴールド/シルバーの先輩後輩小説」


 その日、グリーンはリザードンの背に乗り、山頂付近を一周した。ゴマゾウ達が仲間に入れる群れを探すためだ。そもそもトレーナーが野生のポケモンに干渉するべきではない、というのがグリーンの持論だったが、ここまで入れ込んでしまっては今更放り出す気にもなれない。六匹もの赤ん坊が一所に集まっていたことから、群れが何らかの自然災害に巻き込まれたのではないかと考えられるが、難を逃れて生き残ったものたちがいるかもしれないし、他の群れを見つけたにしても、仲間に入れてもらえるかもしれないと思ってのことだったが、収穫はゼロだった。出発した頃には快晴だった空はいつの間にやら薄く雲が落ち、細かな雪が吹雪いていた。思いのほか視界が悪くなっており、彼は天候の悪化する前に戻って来れたことに安堵した。
 出発点にあたる雪原は、洞窟から歩いて五分ほどのところで、相変わらず無数の足跡やバトルの痕跡ですっかり掘り返され、泥混じりの雪がひときわ目立っていた。東半分はなだらかな丘陵が続いているが、西半分は山頂へ続き、急勾配かつ至るところにクレバスが口を開け、不安定な足場の続く危険地帯となっている——のだが、なにやら様子がおかしい。というのも、リハビリがてらにゴールドと回復したゴマゾウ達が遊んでいると思われた雪原には、人影ひとつ見えなかった。
 内心首を傾げたグリーンがあたりを見渡すと、西側の雪原の終わりに人影を見つけた。それは、危険地帯と雪原のちょうど境目にあたる。修行場から西に向かって歩いて行くと、ある地点から雪原が僅かに盛り上がりを見せ、更に歩くとクレバスが雪原を分つ。それは雪原側と対岸とで渡り幅一メートル弱、高さにして二メートル近い乖離があり、裂け目は暗く底が見えないほど深かった。グリーンが双眼鏡で見ると、雪原側の岸の端で、ゴールドとポケモンたちが一列に繫がって、谷底から何かを引っ張り上げようとしているらしい。最後尾のバクたろう、ウーたろうがゴールドをしっかりつかまえ、ゴールドはエーたろうを抱えて、エーたろうは尻尾と前足後ろ足でゴマゾウを掴んでいる。ゴマゾウたちは長い鼻を前のゴマゾウの足に巻き付け、蔓のようにクレバスの中へ垂れ下がっている。レンズ越しの拡大された視界の中、谷底の暗闇が揺らいでいることをグリーンははっきりと見て取った——野生のゴルバットの群れだ。グリーンがただならぬ事態を察して双眼鏡を仕舞った丁度そのとき、バクたろうとウーたろうが思い切り列を引っ張った。ゴマゾウたちは繫がったまま勢い良く引き上げられ、縄のように宙でしなる。それと呼応するように、山頂側からヤミカラスが風を切り、ニューラが雪を蹴って飛び出した。二匹はクレバスの中に飛び込んで行ったが、数秒を置いて山頂側の岸の上へ登ってきた。いつの間にかシルバーが、山頂側の岸に立って、二匹を待っていた。引き上げられたときの勢いでひっくり返っていたゴールドが起き上がって、辺りを見回し、崖下のシルバーを覗き込み、何やら言葉を交わしたらしかったが、にわかに口論がはじまったのを、グリーンはその身振りで察した。空の上から、真っ白な雪の上に放り出された幼い子供の影はひとつ足りない。
 この件についてグリーンが見たものは、それだけだ。
 あとから聞いた話によると、レッドとグリーンがドンファンの群れ探しに出かけている間、空から探すことのできないゴールドとシルバー(ヤミカラスがいるものの、強風の中での長距離飛行はとても耐えられないだろう)は、ポケモン達と留守番をしていたのだったが、快晴だった空が陰り、風が強く、細雪が落ちはじめた矢先、鼻のないゴマゾウがいなくなっていることに気がついた。シルバーが空から探し、ゴールドと他のポケモン達が地上を探していた。こっちの事情などお構い無しとばかりに視界を塞ぐ雪と風にもめげず、懸命な捜索の甲斐あって、ゴマゾウ達が彼女を見つけた。彼女は例のクレバスに転落し、裂け目四メートルの深さのところにある小さな窪みで小さくなっていた。レッドもグリーンと同じく群れ探しに出かけている今、鳥ポケモンはいない。ゴールドとポケモン達はなんとか救い出そうとした矢先に、西の空からシルバーが滑り降りてきた。
 『一気に引きあげろ』と、シルバーはそう叫んだらしい。
 それを聞いたゴールドは、もう先頭のゴマゾウが彼女を救い出したものと思って、引き上げの号令をかけた。ウーたろうとバクたろうの渾身の力で引っ張られるのを感じ、間もなくして一列に繫がったゴマゾウ達が勢い余って雪の舞う中に浮かぶのを見た。だが、その中に鼻のない彼女の姿は無かった。ゴールドはそのとき、気のせいかと思って、自らもひっくり返ったその後に辺りを見回してみたのだが、やはり彼女の姿はなかった。ゴールドが崖の端に駆け寄って裂け目を見下ろすと、けたたましい羽ばたきの音が聞こえることに気付いたと思ったら、それはクレバスに反響を残してすぐさま遠ざかった。続いて、彼はシルバーが対岸にいて、クレバスをじっと眺めているのを見た。そのとき、クレバスの闇からヤミカラスの姿が浮き上がり、ニューラの鉤爪が対岸を捉えた。ただ『間に合わなかった』と、シルバーは言ったらしい。
 彼が言うには、クレバスの底からゴルバットの群れが、塞がりきっていない傷から滲む血の匂いを嗅ぎ付けた。このままでは鼻のないゴマゾウだけでなく、彼女を助けようとしているポケモン達、果てはゴールドまでもが谷底に引き摺り下ろされることを予期したがための行動だったらしいが、それはゴールドを酷く怒らせた。その怒りを、シルバーは甘んじて受け容れているように見えた。一足遅れて戻ってきたレッドが状況を呑み込む間もないままに、グリーンは彼らをまとめてキャンプに追い込んだ——一向に鎮まらないゴールドを眠らせて。
 彼らがキャンプへ戻るのを待ちかねていたかのように、風はいよいよ勢いを増し、横殴りの雪を山に吹き付けた。夜の半ばには、洞穴の入り口を雪が覆った。これじゃ何も見えないな、という何気ないグリーンの呟きに応えるように、『何も問題ないだろ?』とレッドは言った、『眠れば同じさ』。
 『寝たら死ぬんだろう』と意地悪く返せば、『生き返ればいい』と言って、レッドが目の奥で微かに微笑んだのがわかった。
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