pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
ジョウト3人
なんでえ、どうしたんだよ委員長。浮かない顔して。
図鑑のメンテナンスの日、クリスは実に久しぶりに、同じジョウト地方の図鑑所有者であるゴールドとシルバーの二人と顔を合わせた。クリスは昨日仕事でミスをしたばかりで、まだ気分が重たいのを引きずっていた。目敏くそれを表情から読み取ったらしいゴールドが、揶揄うようにそう尋ねた。
仕事でちょっと失敗しちゃって。
なんだよそんなことか。
溜息まじりに答えたクリスに対して、ゴールドはあっけらかんとしてそう言ったのだ。そんなこととはなによ、と思わず言い返そうとクリスは顔を上げたのだけれども、隣のシルバーが不思議そうにクリスを見返していたので、思わず言葉に詰まる。
真面目なのはいいが、気にし過ぎは身体に毒だぞ。
気を遣ったらしいシルバーが少し笑って言った。気にし過ぎ。そうだろうかとクリスは思う。あ、と何かを思いついたらしいゴールドが、ソファの背もたれから勢いよく背中を離し、前に乗り出して言う。
「そんなことよりさあ」
それから彼は、最近の旅で訪れた街で発見した食べ物について語り始めた。甘味に珍味、土産物からB級グルメ。どこそこの何が美味しかったとか不味かったとか、クリスやシルバーの理解の範疇を超えるコアな話まで。坊ちゃんの食い道楽に半ば呆れた突っ込みを交えつつも、シルバーも文句なく聞いていた。それからしばらくして、おまえもなんか喋れよ、とゴールドが隣のシルバーを突っついた。
シルバーの話は、旅をしていた間に見つけたポケモンについてや、野生の大型ポケモンに寝込みを襲われたりといった、旅の間のごく印象深い出来事が中心だった。それに時たま思い出したようにぽつりと、義姉の話が混じるのが微笑ましかった。それにめずらしかったのは、虹の話。樹の枝の上で雨宿りをしているうちに寝入ってしまい、目が覚めたら空に虹がかかっていたことを彼は話した。
お前がそんなロマンチストだったとは知らなかったぜ。
茶々を入れるゴールドに、いや、とシルバーは淡々とした声で否定した。
クリスが好きそうな景色だと思ったのを思い出しただけだ。
そう答えた彼の表情はやわらかかった。クリスと出会わなければ、虹など、じぶんの記憶には残らなかっただろう。おそらく、そんなふうに考えたのかもしれなかった。次はクリスの番だぞ、とシルバーが言う。
仕事でちょっと失敗しちゃって。
原因はうっかりミスでね。
帳簿の記入を、一桁多くしちゃったのよ。
他の職員が気付いてくれたからよかったけど。
ほんとうに危なかったわ。
もっと注意し「そんなことよりさあ」
一瞬で頭に浮かんだ言葉の羅列を打ち消した、魔法の言葉。昨日と今日と二日に渡って気分を曇らせていた出来事が、あまりにもちっぽけなものに思えてクリスは笑い出したくなる。そんなこと。確かに、そんなこと。仕事が人生の全てではないなんて、分かっていたはずだったのに。そして彼女は口を開く。
「あたし? あたしはね、」
立ちこめていた暗雲は既に遠く。心躍るような歌い出しで、彼女は自分の中の大好きな言葉達を前に、どれだけ素敵な話を紡げるかを逡巡する。