pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
ゴシル。淋しさすら甘美。
「おまえさ、サカキと一緒に暮らしたいとか思わねえの」
口にしてしまってから、しまった、って思った。あえてずっと触れなかった話題。雰囲気の緩み切った日常の部屋のなかで、ふと浮かんだ思考がそのまんま声になっていた。携帯ゲーム機の画面からおそるおそる顔を上げて、シルバーの表情を窺う。シルバーは、タウリナーΩの大図鑑に視線を落としたまま、表情ひとつも変えていなかった。
「べつに」
本当になんでもないように、それだけ。それにはこっちのほうがむしろ拍子抜けして、冗談ゆうなって、と問いつめたら、ちらとシルバーが視線だけを向けてきた。すこし呆れたような色を孕んでいる。
「ならお前はこの年になって、親にべたべたしたいとか思うのか?」
「ベタベタって、おい。そりゃ、思わねえけどよ」
「そういうことだ」
答えたシルバーの眼差しがひどく淋しそうで、言葉に詰まった。
親に甘えられる時期というのは限られていて、シルバーは自分がとうにそれを通り過ぎてしまったことを知っているのだ。取り戻せるものなら取り戻したいのかもしれない。けれど時間は戻らないし、奴は自分の軌跡をちゃんと誇りに思っている。親もなく、同じ境遇のブルー先輩と寄り添うように生きてきた日々を、罪に手を染めながらも復讐に向けてひた走った記憶を。いまのこいつにとっては、どんなに忌まわしい過去すらも、自分自身なんだ。もしセレビィが手を貸してくれると申し出たとしても、こいつは父子としての記憶と、今の自分自身の記憶を天秤にかけるならば、迷うことなく後者を選ぶだろう。そのくせ。
「置いて行かれた子供みたいな顔しやがって」
「……誰が子供だって?」
「いて」
弱い腕の力に床に引き倒される。抗おうと思えばできただろうが、ふざけるにしても弱々しいその力に、逆に気力をそがれてしまった。
シルバーは、父を知らない。だが、知らないながらにいま淋しさを感じているのであれば、その寂寥感すら奴にとっては喜びなのかもしれない。影のようなものだ。父を知らないことによる淋しさは、こいつのなかで、きっとそのまま父の存在へと繋がるのだろう。
淋しさよ、はやくこいつの空虚を埋めてしまえ。父親のことも、面影に縋り付く子供じみた孤独も。そしていつか淋しさごと全部、俺が埋めてしまおう。未来にこいつが笑えるような、笑い話になるように。