pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
甘ったるいシルブル、いろいろ謎 R-18
描写は大したことないですが、念のため
描写は大したことないですが、念のため
「……う、っ、ねえ、さん!」
ついに耐えかねたらしいシルバーに思いのほか強い力で押し戻される。けれど怯んだのも一瞬、咄嗟に手を伸ばして指先で耳の裏をなぞる、と、目の前の身体がびくりと跳ねた。力の抜けたその隙に馬乗りになった身体にぐっと体重をかけると、もぞりとシルバーが身じろぎした。
「くすぐ、ったい、……もう!」
めずらしく怒気を孕んだ声で今度こそ引き剥がされてしまった、その瞬間に腕の隙間から見えた生意気そうな表情が可愛くて抱き締めたの。わ、と間の抜けた声を上げて再びベッドに沈んだシルバーはほとんど迷わず抱き締めかえしてくれたから、それがまた嬉しくって。ふたりでころころ笑った。
あたしは昔からシルバーをくすぐるのが好きだった。気丈なあの子が目に涙を浮かべて必死になって逃れようとするのがおかしくて、ねえさんのばか!って捨て台詞を吐いたあの子に謝って再び身を寄せ合うのが好きだった。記憶の中のあの子は今でも生きているみたいに、もうくすぐらない?って疑い深そうな視線を向けてくる。くすぐらないよ、ごめんね、なんて心にもないことを何度言ったかわからないわ。ごめんねシルバー、十年経ってもくすぐってるのよ、あたし。
「そういえば、あんたはあたしのことくすぐらないね」
ごろん、ベッドに肘を突いて転がって、顔を隣のシルバーに向ける。
「……ねえさんが、俺はくすぐるの下手だって、言った」
ようやく息をついたばかりで、頬が僅かに上気している。上がった息を整えながらの言葉はどこかたどたどしくて、むくれているようにも聞こえた。
「あら……ほほ、そんなこと言ったかしら」
「言った。……ねえさん、ほんとは今思い出しただろ」
何かしらこの子、鋭いのはいつもだけど、めずらしく強気に出るわね。うーん、根に持ってるとか? ……まさかねえ。でも目の前の表情が拗ねているのは気のせいじゃなかったみたい。
「なあに、そんなにあたしのことくすぐりたかったの?」
子供みたいな表情が珍しくて踏み込んでみれば、シルバーはちいさく唇を動かした。聞こえなくて耳を寄せれば、さっきよりも少しだけ大きくなった、けれどまだ消え入りそうな声が聞こえた。
「…………悲しかったんだ……ねえさんと同じようにしたかったから」
すとん、何かが落ちて来る音がした。そう、あんた、そういう気持ちだったの。
くすぐり遊びしましょ、と言ったのはずっと昔のことだったっけ。シルバーをくすぐり倒した後に、次はあんたの番ね、といって譲ったのに、ぜんぜんくすぐったくなかった。子供の頃だったから、ずいぶんストレートに言ったんだろうな。確かにそれから、シルバーがあたしをくすぐろうとしたことはなかった。あたしが一方的にくすぐるのから逃げて、あのおとなしい優しい子が、ねえさんのばか!なんて言って逃げたあとに暫くは寄りつこうともしなかったのは、きっとそういう気持ちがぐるぐるしていたからかしら。思い返せば、他にも感情に任せてストレート過ぎる物言いをした記憶があるけれど、今になって考えてみてもまあ、しかたがないわね、まあ、でも。
「ごめんね、あたし全然あんたの気持ちなんて知らなくて。……折角だし、ホラ、くすぐってみる?」
ベッドに仰向けに転がって、俎板の上の鯉状態。横目でシルバーを窺うと、うつ伏せに腕を突いた姿勢で、え?っていう顔をしていた。それがあんまり意外そうで吹き出しそうになるのを、口端をつりあげるくらいに何とか留める。
「なあに、心配しなくても、もうくすぐるの下手なんて言ったりしないよ。実際下手でも」
「…………ねえさん……」
一気に脱力したように呟いたシルバーを前にして、あら何だか今日はお口の調子が良過ぎるみたいだわ、と浮ついた気持ちで思った。……と、シルバーが身体を起こして、あたしの身体を跨ぐようにしてベッドに手をついて見下ろしてくる。さあ来るのかしら、うーん、久しぶりだと流石に緊張、する……かな。
「俺、今は別にねえさんのことくすぐりたいとか、思ってないから」
逆光に影の差す唇がそう動いた。あ、いま、ちょっとかっこ良かったかも、そう思って嬉しくなる。しぜんと口元に笑みが浮かんでくるのが抑えきれない。あたし今きっとすごくいじわるな顔してるんだわ。
「あら……だったら、あんたはどうしたいの? あたしを」
「すぐそういう訊き方するんだ。わかってるくせに」
あんたこそらしくない言様じゃない? そういう遠回しなの。ゴールドにでも教わったのかしら、それともあたしに似ちゃったかしら。言葉もなくふたり、ベッドに沈んだ。
*
恍惚の中で見上げる表情は世界で一番かっこいい、なんて思うの。いかにも男の子然とした表情、仕草と、かたいからだ。つらくない?なんて指先さえ触れずに囁かれたときには言葉の先から溶けてしまいそう。温度を怖がるあたしをあの子は知っている。つめたい指先でふれて、こぼれたうわ言のひとつひとつを、やさしい手つきが拾いあつめていくのを見ていた。
どうしてかしら、こんなときなのに、小さかったときのことばかり思い出すの。あたしもあの子も、知り過ぎるくらいお互いのことを知り尽くしていた、街のおふろに入れば当然のようにあの子を連れて女湯に入って、身体を洗いながら裸の見せ合いっこだったしたし、怖い夢を見て、あの子にトイレまでついてきてもらったことさえあった。そんなこと、何もいま思い出さなくてもって、ねえ、思わない?素面だったら完全に笑い話にしかならないことだって分かってるのに、どうしてかしら。記憶の中のあの子がいまのあの子と重なるたび、体温が上がる。いとしいって思う。手を伸ばしてしあわせよって囁いたら、視界がぼやけた。あたしの涙かな。それともあの子の涙が落ちてきたのかな。泣いていたのはどっちだったかしら。
*
「泣いているの?」
……しあわせ?って尋ねて震える背中に擦り寄ったら、うん、って消え入りそうな声で返ってきた、そのあとの、伝わる温度のか細さに、声を殺して泣いていた。