pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
リクエスト「シルブル」
獰猛なポケモン達の溢れ返るハナダの洞窟にその日に挑むのも不安で、念のため、シルバーから連絡のあった日に一度軽く見回ってみて、且つ早めに出発したから、遅れをとることはないと思っていたら、本当に早く着いてしまった。シルバーの言っていた座標の地点は、天井の高い広間だった。広間とはいっても、ところどころに隆起や突き出た石柱があって、座標地点は丁度、その端。高台のように盛り上がった隆起があって、遠目にポケモン達の動向を観察するには絶好の場所。サイドンやサイホーンという大型のポケモンなら、まず見逃すことはない。
あのこは大地の奥義から見出した、先代トキワジムリーダーが過ごしたことのある場所に行くと、そう言ったの。止めなきゃならないと思ったのは、あたしがあのこの”ねえさん”だから。あたしにとってもシルバーにとっても、どっちが良いことかなんて分からないけれど、あたしはここに来ないといけなかったの。
(”あのこ”があたしのためだけに存在したのとは違って、”ねえさん”という生き物は、あのこのためだけにいたんじゃない。”ねえさん”は、弱くて、可哀想な……ただの女の子よ)
シルバーの動向の視察はケーちゃんに任せて、高台を降りた。流石に、ここじゃ視界が開けすぎているから、キャンプしていたとするなら別の場所でしていたはず。
洞窟内は、地下水の雫が岩を伝って落ちて行く音が聞こえるほど静かだったけれど、そこら中にポケモンの息遣いがひしめきあっているのが分かる。いったいどこにこれほどのポケモンが隠れる場所があるのかと思うほどだった。人間であるあたしは彼らのように上手に身を隠す方法を持っていないけれど、彼らはあたしを監視すれども襲って来はしない。
あたしがサカキ——観察者だったら、絶好の監視場所を見つけた後に、どうやってキャンプ場を見つけるかしら?
ひとまず広場を出て、できるだけ幅の広い道へ進む。こんな洞窟で下手に狭い道に入って、野生のポケモンに囲まれたりするのは勘弁だわ。思考の道筋を辿るように五分程歩いていたら、ふと人間ひとりギリギリで入れるくらいの隙間を見つけた。このくらいの隙間だったら、ポケモンで塞ぐのも簡単だわ、地面タイプ専門のサカキなら尚更——と、思って、気付いた。
「…………ここ、かしら……?」
壁に手で触れてみて、そっと足を入れてみる。中は空洞になっていて、天井は高すぎて見えない。上のほうから、ゴルバットやズバットの鳴き声が聞こえる。
ここに生息するのは人間よりも大型のポケモンが多いから、殆どのポケモンはあの隙間を通っては来れない。よってここが何かの巣である可能性は低く、入り口を塞いでしまえば中をのぞかれることもない。上空にはズバットとゴルバットの気配があるが、彼らが好んで降りてくるとも考え難いし、万一降りて来たとしても、下から見ればその姿は丸見えだ。
「あたしだったら、ここにするけど……」
ほんの五畳ほどの小部屋をうろつき回って、ちょっとした岩をどかしてみたりしてみたけれど、サカキがここを利用したという確信はどこにも見つからなかった。
「……まあ、普通に考えたらそう、よね。仮にここだとしたって、よく忘れ物をするロケット団首領なんてさまにならないもの」
悪いねえさんだって分かってるけど、ちょっとだけ安心して、息をついた。そのときにちょうど、ケーちゃんがテレポートで、シルバーの接近を知らせてくれた。もうそろそろ、あたしも戻らないといけないみたい。
そこでふと気になって、ボールの中のぷりりに言ったの。
「……ぷりり。シルバーと戦うかもしれない——本気で。間違いなのかもしれないけど……あたしのために、しなきゃいけないことなの。全て終われたら、きっと仲直りできるから……それまで、力を貸していてね」
ぷりりは全部分かってるみたいに、ボールの中でにっこり笑った。
妄想だって笑われちゃうかもしれないけど、あたしたまに、ぷりりのことお姉さんみたいって思うこと、あるの。
そして歩き出して、視界の端に何か紙きれのようなものをみとめて息を呑んだ。見たらいけないわ。そう思ったのに、あたしは気付いたら屈み込んで、それを拾い上げていた。くしゃりと丸まった古い写真。右端から真ん中にかけて、ほとんどまっぷたつに切り裂かれていたれど、表面の土埃を落としたら、
「……サカキと……それに、抱かれているのは……」
喉がからからに乾く。
言葉にするのが怖かった、けれど、あたしは。
「………………シルバー」