pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
リクエスト「シルブル」
上空からのゴルバット達の声のほか、何も聞こえない。なんとか広間から脱出した後、あたしが見つけた縦穴で休憩を取ることにしたの。幸いにも互いに怪我はなかったけれど、流石にバトルとトラブルが連続して起こって疲れていたし、あたしは膝まで泥に浸かっていたから、それを洗い落として乾かさないといけないってシルバーが言ったから。ポケモン達の手当をしたあと、キングドラで泥を洗い流してもらった。携帯燃料とマッチで火をおこして、靴と靴下を乾かしながら、シルバーが持って来ていたらしい毛布をもらった。もしかしたら、お父さんのキャンプ地を見つけて、野宿するつもりだったのかもしれない。
にわかに勢いを増して揺らぐ火を眺めていたら、ふとそんなことを思って、情けなさに泣きたくなった。
「……ごめんね」
シルバーの顔をまともに見られなくて、体育座りのまま、毛布に顔を埋める。
「……どうして?」
「写真。最初に渡しておけばよかったと思って」
応えるシルバーの声がとてもやさしいのに涙を煽られる。ここで泣いたりしたら、ほんと、かっこわるいもの。
「些細なことだよ」
そういってシルバーが静かに笑う。流石にすこし変に感じて、少し顔を傾けてシルバーを窺ってみた。口元が微笑んでる。
「あんたはあたしのこと、怒ってもいいのよ……」
「知ってる」
「じゃ、なんで怒らないの」
「怒るようなこと、なにもなかったから」
「嘘……」
「どうでもいい嘘をつくのは苦手なんだ」
からかわないでよ、そう言おうとして目線を上げたの。そしたら暗闇の中、あのこの目は磨かれたみたいにぴかぴか光ってた。あのとりつかいの子とはじめて出会ったときみたいに。ああ、どうしよう。救われないわ、あたし。今度こそ泣きたい思いで顔を伏せて、口を閉じた。しばらく沈黙がつづいて、だんだんあたたまってきてとろとろとしてきたころ、ふいにシルバーが口を開いた。
「好きだよ」
ぱちぱち、燃える火の音と、遠いゴルバットの声だけ、反響してる。少しまどろんでいて、反応が遅れたけれど、今度はあたしが笑う番だった。
「……今更な話じゃない?」
「そういうのじゃなくて」
正直なところを返せば、シルバーも少し笑いながら否定する。
「ずっと、俺を守ってくれたねえさんも、そうじゃなくなったねえさんも好きだ。化粧して、香水をつけてるねえさんも……そんなには嫌いじゃない」
どこで覚えてきたんだか、そんな殺し文句。顔を見たいと思ったけれど、それよりもずっと恥ずかしさが先行してしまって顔を毛布に埋めた。
微睡みの中で、あたしは昔のことを思い返していた。仮面の男のところにいたときのこと、シルバーと一緒に、色んなところをまわっていたときのこと、ひとりで詐欺や掏摸を繰り返していたときのこと、ポケモンリーグに挑戦したときのこと。どれだって愛しい、あたしの思い出だ。いらないものなんてない。何一つとして、愛せないものなんてない——きっとシルバーが言おうとしたのは、こういうこと。
ねえさん、眠ったの? 愛しい声が夢のなかにまで届いてる。目覚めたら、きっとあのこの顔が見られる。そう信じられることが、涙が出そうなほど幸せだった。
--
<あとがき>
目指したのはシルブルハッピーエンドでした。一応、最後のシルバーの台詞は恋愛感情ということになっています。
「あまやかな」「ミルキィ没」のご期待に添えられず申し訳ない気持もあるのですが、気に入っていただければ……。
また、走り書きのため色々と荒いので、後で全体を調整・補完後、完全版を上げ直しますが、ストーリーとしてはこれでほぼ完成になると思います。
リクエストありがとうございました!