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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
2026年06月22日 (Mon)
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2014年12月30日 (Tue)
リクエスト「シルブル」



 東向きの窓辺に取り残された、からからに乾いた植物の葉の間から、黄金色の陽光が溢れている。誘われるように薄く窓を開いたら、冷えた明け方の外気が細く流れ込んで来た。
 トキワジムの一角にある物置部屋には大量の書物があった。現ジムリーダーであるグリーンが元ジムトレーナーに聞いたところによると、先代ジムリーダー——サカキが資料庫として使っていた場所ということだった。そこには一人で読むには膨大すぎる書物が貯蔵されていたが、地面タイプのジムだったこともあるだろう、チーク材の本棚はしっかりと壁に固定され、更に収納板は奥から手前にかけて僅かに上向きになっていて、ポケモンの”じしん”でも、本が落ちないように工夫されている。サカキ失踪ののち、この部屋も例外ではなく警察の調査が入り、本の一冊一冊に至って念入りに調べられたが、ごく普通の図書館と同じように、たまに文章にラインが引かれたりしているほか変わったところもなく、そのままグリーンの代に受け継がれることになった。だが、先代の素性が明らかになった今はその場所により付くような物好きも少なく、結局物置部屋ということで落ち着いているのだという。
 グリーンからその一連の話を聞いて初めてその元書庫を訪れたときに、シルバーが目にしたものは、ポケモンに関する研究論文や学説の他、それと同じくらいの政治や経済や、その他もろもろの学問に関する本だった。心理学、地学、歴史、哲学、その他諸々、ジャンルは多岐に渡り、最もすくないのは美術や音楽、文学等の芸術系だったが、戯曲や小説が数十はずらりと並んでいた。
(お父さんのことを改心させるなら、知っておいたほうが良いのかもしれない)
 倒すべき悪として、敵の知っている知識を。
 改心させる父親として、大量の書物を紐解いたその時間と想いを。
 同じことをしたって勝つことはできないのは分かっている、それでも、息子として、父親を理解できることを願っていた。
 けれどもシルバーはあまりに気付いていなかった。連なる文字を辿るたび、丸く癖のついたページのはしをめくるたび、特に鉛筆やペンで線引きされた文章を目で追うたび、ページの裏にまで染み込んだ赤インキのあとを見るたびに、いままでぼんやりとしか見えていなかったものが明瞭にうかびあがって、それが違和感となって心の底に燻っていたこと。以前であれば、義姉が化粧を塗りたくっていても香水を振りかけていても、殆ど気に留めなかったであろうこと。ただ、それはあまりにささやかすぎるので、彼が目標に向かって突き進むエネルギーの巨大さと、父親に近付くよろこびにくらんで、かき消されてしまっているだけなのだ。
 とんとん、と扉を叩く音がして、シルバーが顔を上げると、入り口にグリーンが立っていた。彼は、”大地の奥義”を手にしていた。
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