2LDKの広々とした高層マンションの一室、ガスコンロからオーブンまですっきりと収納されたシステムキッチンのなか、とろ火で温められた真っ白なミルクから細く湯気が立つ。スリッパの音を立て、ブルーが冷蔵庫からイチゴジャムを取り出したところで、ふと後ろで笑った気配がした。
「イチゴミルク好きなの、変わらないね」
その声には振り返らず、ブルーは瓶から搔き出したジャムをミルクパンの中に加える。
「あんたは変わったわね。紅茶もコーヒーも、砂糖なしで飲むようになったじゃない」
「俺だって成長したんだ」
「あらそう、だったらイチゴミルクなんて要らないわね?」
「もらうよ」
意地悪く視線だけで振り返れば、穏やかな声に笑った顔。昔はこんなふうにしたら、すぐに泣きべそをかいていたのに。
ブルーは彼のこういうところが好きだった。拗ねたり怒ったりしてみせたところで、彼はただ受け入れてくれる。ずっと前からブルーだけを特別扱いしてくれる。君だけだよなんて歯の浮くような台詞はなくても、その一挙一動を見ているだけでひしひしと伝わる。
二つのカップにイチゴミルクを注いでテーブルに並べ、ブルーはそこに少し蜂蜜を足し、彼はそのままで。それから学校の話や、最近あったことの話をする。
しばらくもしないうちに、話の最中にチャイムが割り込んだ。彼はぴたりと動きを止めて、立ち上がる。
「ここでまってて」
ブルーはおとなしくしていたのだが、やがて玄関の方からぽつぽつと聞こえてきた話し声に聞き覚えがあることを確信し、まさかと思って席を立つ。キッチンを出ると思った通り、男友達二人の姿が見えて、思わずこめかみを押さえる。その二人に応対していた一回りも小柄な彼が振り返る。姉さん?
「……ねえさん?」
間抜けな顔で反芻したのは二人組の片割れ、レッドのほうだった。グリーンはその一言で全てを察したらしく、溜息とともにうなだれた。そのちぐはぐした二人の様子を見たとたん、笑いがこみ上げてくる。そう、そうね、きっと心配してくれていたのよね。ブルーは歩いて行って、戸惑ったように佇んでいる同じ背丈くらいの彼を抱きよせ、目の前の友人二人に向かってにやりと笑みを浮かべてみせた。
「この子はシルバー。あたしのおとうとよ」