pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
学パロ/イエロー
夕暮れ時の生温い空気の中を歩いていた少女は、正門の前で足を止めた。黒ずんでところどころひび割れたコンクリートの塀には、色褪せた校章と学校名。週明けから、彼女はここの生徒になる。全く楽しみがないといえば嘘になるけれども、住み慣れた田舎とはかけ離れた街並のようすや、夕焼けの赤い光に照らされるコンクリートのくらい色合いなどには気を取られずにはいられない。たまに、ぎょっとするような心持ちになるのも確かだった。
「そこのコンビニでピカチュウの肉まん発売されててさあ」
「寮食あるだろ」
「いいじゃんおやつだって」
二人の男子生徒が連れ立って、楽しげに門に向かって歩いていた。日に焼けた肌が夕陽の赤につやつやと光る。笑い声は一瞬で大気に解けて行く。学校名の札の前で立ち尽くしていた少女の横を通り過ぎた一瞬後に、弾かれたように少女は顔を上げてその後ろ姿を凝視する。
(あ……)
夕焼けのなかですら映える、くっきりと赤い虹彩。笑った横顔に、息を呑んだ。
小さな頃に森で迷って、見知らぬ少年に助けてもらったことがあった。友達といっしょに昆虫採集に来たという、黒い髪と赤い目の印象的な男の子だった。彼はとても頼もしくて格好よくて、少女は憧れのような気持ちを抱いたのだけれども、電話番号も住んでいるところも聞かなかった。もう、二度と、会えないと思っていたのに。
(……まさか……いや、他人の空似かも……)
期待を払拭するように頭を振る。こんな偶然なんてあるわけない。そう思いつつも彼女の中には、不思議と謎めいた確信だけが残っていた。