pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
シルバー←クリス←ゴールド
「ふられちゃった」
公園のベンチで、薄水色のワンピースを着たクリスはからりと力なく笑った。背伸びした五センチヒールのサンダルを履いた脚を投げ出して空を見上げている。そうかよ、とゴールドはぶっきらぼうに言ってどっかりとその隣に腰を下ろした。
すまない、クリス。
少し沈黙したあと、彼はそう答えた。感情の伴わない真摯なまなざしが救いだった。その目の色に哀れみも苦しみも表れないことにクリスは安堵した。
「あんなヤローのどこがいいんだか」
趣味悪、と吐き捨てるゴールドに、クリスは苦笑する。
「ゴールドはいっぱい知ってるでしょ、シルバーのいいところ」
「けっ。冗談の通じねえ、面白味のねえ奴じゃねーか。こうと決めたら聞く耳もたねえし」
「真面目だし、何より誠実でしょう? 確かにちょっと突っ走りがちなところは心配だけど」
「手癖の悪いあいつのどこが真面目だよ」
「もう、性格悪いんだから」
分かってるくせに、とクリスは少し怒ったように眉を寄せる。
ここ数年でずいぶん人当たりは柔らかくなったけれど、意思の強いところはずっと変わっていない。来るものは拒もうとするくせに、その一方で目の前で起こりうる悲劇を見逃すことができないところも。年を経るとともに低くやわらかくなる声、伸びた身長、時折見せる少年らしい表情も、かなしげに俯いてみせるところも。そこまで考えて、クリスはああ、と思い出したように溜息を吐き出した。切なさに胸が締め付けられて、息がくるしくなる。
急に黙ったクリスに、どうしたよ、とゴールドが問いかける。クリスはうつむき、悲しげに微笑んだ。
「……わたし、すごく、シルバーのことが好きだったんだわ」
「…………。……そうかよ」
ゴールドは拗ねたような口調のまま明後日の方向を向いたけれども、ベンチから立ち上がろうとはしなかった。ゴールドはいつだって距離を間違えない。クリスに触れようとすらせず、四十センチの間をあけてベンチに座ったまま、立ち去ろうとしないところを彼女は気に入っている。
そのまま声もなく、クリスは涙を三粒四粒ながした。涙のたまった目をつむると、また新たに水の粒が頬へとこぼれおちる。
すきよ、シルバー。
彼女は胸のうちでもう一度だけ囁いて、その言葉の響きを閉じ込めるように呑み込んだ。