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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
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2015年02月15日 (Sun)
リクエスト「サカシル親子救済小説」

またしても見切り発車です


 冬。ゴールドとクリスと三人で喫茶店に行くことになった。図鑑のメンテナンスでたまたま集まったときに、暇を持て余していたゴールドが遊びに行こうと言いだして、有名なファストフード店の名前を挙げたことが切っ掛けだった。クリスがそれを聞いて、いつもそんな食事をしているわけじゃないでしょうねと眉をしかめ、それからの話はあまりよく聞いていなかったが、ともかくも、ゴールドがクリスを自慢の店に連れていくという方向にまとまったらしい。いつの間にか俺も頭数に入れられていたが、いつものことだ。何でもゴールドの話によると、その店はコーヒーがとても旨いらしい。紅茶もダージリン、アッサム、セイロン、ウバ……ええとあとなんだっけな、その他フレーバーティー、時期によっちゃファーストフラッシュなんかも頼める、コーヒーで俺の好きなのはキリマンジャロだな、カプチーノやラテなんかも絶品……とか何とか。何言ってるのかさっぱりだったので話半分に聞き流していた。クリスはその横で、そういえばあなたお坊ちゃんだったのよね、とつぶやいている。内心で同意しながら、聞いていないふりをしていた。
 入り口のガラス張りの扉を開けると、備え付けられたベルが鳴る。店内は広くない、ざっと数えて椅子の数は二十弱といったところ。その三分の一ほどが埋まっている。どこがいいかとゴールドが話しかけてきたところで、ふとカウンターに座っている男に目を奪われた。店内だというのに、帽子をかぶり外套を着込んでいる。スエードの黒い中折れ帽と、裾の長い真っ黒な外套。カウンターには見たこともない小さなカップが置いてあった。その男はちょうど立ち上がり、カウンターに代金を置き、足元に置いた鞄を持ってこちらに歩いてきた。すれ違うとき、こっちを見もしなかった。ベルの音が鳴ってようやく我に返った。窓際の席にしましょう、とクリスが言った。どうやら話はまとまったらしい。
「……ねえ、あの人のカップ」
 席につく間際、カウンターの向こうの店員が片付けようとしているカップに気付いて、クリスがつぶやいた。
「デミタス・カップっつって、だいたいエスプレッソ用に使われるやつだな」
「エスプレッソ?」
「ドリップより濃いコーヒー。専用の器具を使って淹れるやつ。すげーにがいけど、食事の後に砂糖いれて飲むとうまいんだ……、マスター、抹茶ラテね」
 早速カウンターの向こうに向かって声をあげるゴールドに、クリスが微妙な顔をする。これだけ語っておいて抹茶ラテなんだ、と言いたげだ。気持はわかる。今更のようにメニューをちらりと見れば、豆の名前が並んでいる。クリスはちらっとそのページを見て困ったような顔をした。
「私はカプチーノ。シルバーは?」
「……ブレンド。アイスで」
「あと、パンの盛り合わせとサラダもよろしく頼むわ」
「ゆで卵とハムのサラダ、小エビのサラダ、グリーンサラダがありますが」
「ゆで卵とハムのやつで」
「ランチサービスのスープをお付けしてよろしいですか」
「お願いします」
 クリスが非難がましい目をゴールドに向けて、年上のかたに『よろしく頼む』なんて、と注意し、ゴールドはいつもの調子で、これだから真面目委員長は、と腕を頭の後ろで組んでふんぞりかえってみせた。
 ようやく落ち着いて店内を見回してみる。緑がかった色味の暗い茶色と白を基調としていて、カウンター席の椅子白いクッションの敷かれたラタン製で、俺たちがいま座ってるのは赤いソファだ。客の数は十名弱。ざっと顔ぶれを見たところ、七割は男性。うち二十台と思われるのは友人同士と思われる男性二人と、ひとりでカウンターに座っている女性のみ、十代に至っては俺たちのみだろう。ゴールドが選ぶ店にしてはずいぶん年齢層が高いと思った。中には、ノートパソコンに向かう男性もいる。
「最近は、子供がいて家じゃ落ち着いて仕事ができないって利用する客も多いんだってよ。ところで、シルバー。さっきお前が見てた客」
 本当に”ところで”だな。不意打ちだ、と内心で小さく毒づきつつ、うなずいた。
「一瞬、サカキに見えたんだが。人違いだった」
 ゴールドとクリスが変な顔をする。その理由がわからずに黙っていたら、シルバー、とクリスが神妙そうに口を開いた。
「あなた、あれからお父様とは会っていないの?」
「……そうだが」
 彼女の質問の意図をはかりかねて、とりあえず答えた。クリスはますます困ったような顔をした。
「どうして? やっと会えた肉親なんでしょう。一度くらい……」
 どうして、とは、こっちが聞きたい。
「もう話はついている。ロケット団首領は俺の敵だ」
「だけど、あなたのお父様でもあるのよ」
 話が平行線を辿りそうになったところで、黙って聞いていたゴールドが口を挟む。
「シルバー、おめえの言うことも最もだけどよ。おめえが追ってんのはロケット団の首領だろ」
「ああ」
「だったら、『お父さん』に会うだけなら全く問題ねえんじゃねえの」
 ……まあ、一理ある。
 思わず黙ると、クリスが心配そうな顔をして覗き込んできた。
「……もしかして、お父様と会うのは嫌?」
「嫌……じゃ、ないが……その」
 なんだろう、この気の進まない感じは。
「…………今更……どういう顔すればいいのか……」
 そうだ。肉親といえど数回会っただけだ。言葉は交わした。不思議と、ちゃんと通じていると分かった。けど、一緒に時間を過ごしたことはない。
 そのまま言い淀んでいると、ゴールドはとつぜん笑い出した。驚いてクリスに視線を移すと、彼女も肩を震わせて声を上げるのを堪えながら、ゴールドの口を塞ぐ。なんだ、俺は何か変なことを言ったのか。
「あのシルバーがそんなこと考えてたとはなー」
 ゴールドはまだ笑っている。なんだかむしょうに気恥ずかしい。なんなんだこれは。
「大丈夫よシルバー」
 クリスは目に涙を溜めながらもそう言った。
「心配するようなことじゃないわ」
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