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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
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2015年01月10日 (Sat)
リクエスト「レッド/グリーン/ゴールド/シルバーの先輩後輩小説」

まずは見切り発車ですが


 休日のトキワジムほど奴にとって退屈なものはないだろう。というのは、たまに思い出したように休日のジムにやってくる親友が、何をするでもなく来客用ソファに寝そべって、ぼんやりと天井を眺めているのを見るたび、グリーンが思うことである。ジムトレーナーの戦績やら、給与計算やらのデスクワークに追われる月末に備え、月の最後の休日には出勤するグリーンの習慣に合わせたかのように、レッドは今日行くけどジム開いてる? と、連絡を寄越して来る。
 今日も、グリーンが資料庫に行っている間に、レッドは彼の執務室の来客用ソファを占領していた。縫い合わせた合皮にふかふかの綿を詰めた二人掛けのソファはありふれたデザインの安物だが、質はなかなかで良く長持ちする。ベテランのジムトレーナーによると先代から一度も買い替えてないという話だったから、先代ジムリーダーはなかなか物持ちのする性質だったのかもしれない。グリーンもそれを倣ってなるだけ気を遣ってはいたのだが、こう深く身体全体でソファに沈み込むレッドの姿を見ると、クッションが潰されるのも時間の問題だろう。それでも、グリーンが思いのままに追い出さないのは、それがソファの耐久性よりも、遥かにデリケートな意味を持っているように思われるからだった。
 グリーンがジムリーダーに就任して、三度目の夏が過ぎようとしていた。ジムリーダーを辞退したレッドの代わりに就いたに過ぎなかった筈が、仮面の男事件がようやく一段落ついたと思ったとたん、当のレッドは祖父の心配の種でもあった無茶な後輩に引っ張られていき、他にも面倒ごとがあったとみえて……、ようやく腰を据えて話ができると思えるようになったときにはもう遅かった。意識せずとも堂々とした立ち振る舞いのグリーンは、元々の実力も相俟って、幸か不幸かあっという間に協会の信頼とトキワの街の人々の尊敬を集め、既に代理云々と言えるような状況ではなくなっていた。レッドもその辺りの事情を理解して、グリーンが続投する方向で早々に話はついた。そのときの親友の態度があんまりにもあっさりしていたので、彼の中でもうモチベーションが失われているのかと思い、当時のグリーンは深く追求もしなかった。だが、レッドは夢だと言っていた。彼は一度抱いた夢を、簡単に捨てきれるような男ではないのだ。
 こうしてソファに寝そべっているレッドは、たまに他愛もないことを言い出したりもするが、殆どの時間を黙って過ごしている。グリーンはそれについてあえて考えないようにしているものの、やはり心の中では、ジムリーダーの一件について考えているのじゃないかと疑いを抱いている。しかし、グリーンはそれを言葉にすることは出来ない——レッドに嘘や誤摩化しをさせることになるかもしれないからだ。グリーンは要領がよかった。ジムリーダーになってから学ぶこととなった、必要な嘘の類いは、意外なほどすんなりと頭に入り整頓されて、必要ならいつでも実践できる状態にある。けれど彼は、もっとも自分が正直であれる場所として、レッドとの間に嘘やごまかしを介在させたくはなかったのだった。
「…………へいわすぎてとけそう」
 向こうからレッドの声がするので、条件反射的にグリーンは、そうかよかったなとだけ応えた。執務机からはソファの背凭れに遮られて、彼の姿を見ることはできないが、少しばかり拗ねたトーンに変わって、続ける。
「つーか、暑くない? 冷房入れてないとか?」
「入っている。二十八度だが」
「高いって」
「節電だ」
 文句があるならフレンドリィ・ショップにでも行け、と出掛かった言葉を呑み込んで、グリーンは口を閉じた。デスクワークだけでなく、別件のレポートの締め切りも近付いて来ている。時間はいくらあっても足りないのだ。集中しようとした矢先、テレパシーのように想念が頭を掠めるままに、再びグリーンは口を開いた。
「……シロガネ山」
「へ?」
「この時期、大抵そこで修行してなかったか」
 そうだ、夏は決まってレッドは山ごもりをして、秋の深まる前に帰ってくるのが常だった。去年も、夏の間にレッドは一度たりとも来なかった。あー、とソファの向こうから、彼らしからぬ、やる気なさげな声が聞こえる。
「なんか最近、行き詰まってるっていうか、修行するにもゴールが見えないんだよなー……スランプってやつかなー」
 そういうことか。グリーンは内心で得心し、再びレポートに向かった。グリーンから見れば、レッドほどスランプと無縁そうな男もいないと思っていたのだが。レッドが何かを思いついたように声を上げた。
「そうだ、グリーンさ、今年夏休みもう取った?」
「……来週の予定だが」
 拍子抜けしつつの答ではあったが、レッドはその言葉を待っていたとばかりに勢いをつけて起き上がった。背凭れに両肘を乗せ、グリーンに顔を向けているレッドの身体は、断続的に続く詰まったような衝撃音に合わせて上下に揺れている。
「じゃあ一緒に修行しよーぜ!」
「なんで俺が。ゴールドでも誘え。ソファの上で跳ねるな」
 冗談じゃない、とグリーンは思った。今年多目にとった夏休みを使って、今まさに取りかかっているレポートを八割まで進めてしまわなければならないのだ。そこで、彼は以前にもこの親友と修行をしに行ったことのある後輩の名前を出したが、レッドは聞くなりにやりと笑った。
「……へー? 自信ないとか?」
「…………なに?」
 無論、それを聞いて黙っていられるグリーンではない。
「久々に思いっきりバトルしたいなーと思ったんだけど、そーゆーことならしょうがないよなー」
 ぴくりと親友の片眉が上がったのは見るまでもないとばかりに、レッドは天井を眺めながら嘯く。その態度がいかにもこれみよがしで、グリーンは既に彼の策に嵌っていたことは承知していたが、もう後に退くつもりはない。
「行けばいいんだろう。……こっちこそ、望むところだ」
 途端、やりい! と両腕を天井に伸ばしてガッツポーズをとり、レッドは背をむけてテーブルに放っていたポケギアに手を伸ばした。
「折角だからゴールドも誘っとく。で、シルバーも誘えばタッグマッチもできるしさ。あ、シルバーの連絡先…………、ブルーに聞けば分かるかな?」
 何を言い出すかと思えば、とグリーンは少し呆れる。ゴールドはともかく、シルバーはこの親友と殆ど接点が無かったというのに、開口一番、修行に行こうぜ! とでも誘うつもりなのだろうか。とはいえ、既に気分の伝染しているグリーンに止めるつもりはない。彼もまた、自分のポケットからポゲギアを取り出す。
「俺が知ってる。誘っておこう、来週の水曜からでいいな?」
「さっすが!」
 大袈裟に思えるほどの歓声を上げるレッドのことを言う気にはなれなかった。
 レポートに書くつもりの調査結果は、厚めのノート一冊にだいたいがまとまっているから、小型のノートパソコンとバッテリーと一緒に持って行けばいい——バッテリーが切れたらレッドのピカに協力してもらうことになるが、おそらく嫌とは言われないだろう。
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