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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
2026年06月22日 (Mon)
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2015年01月12日 (Mon)
リクエスト「レッド/グリーン/ゴールド/シルバーの先輩後輩小説」


 胸が熱く、息切れがして、動悸が止まない。炉に石炭を放り込まれて猛烈な勢いで走り続ける汽車が、その心臓部から爆発寸前まで膨れ上がった蒸気を煙突の細い筒から吐き出しては、まだ苦しいともがきながら、無理矢理にベアリングを回転させられ車輪をまわすのに似ていた。だが、今はもう、停まっている。心臓は停まっている。排出の追いつかなかった蒸気が、外気に冷やされて白い煙となって、真っ青な空の上にのぼっていく。
 寝ると死ぬぞ。遠く聞こえたその切れ切れの笑い声にも、グリーンは顔を傾ける気が起こらなかった。ただ思い出しただけだ。ここには、喘ぐように熱を吐き出しているものが、もうひとつあるのだと。寝ると死ぬのか。問い返したのは、それなら毎晩死んでいることになるじゃないかと思ったからだった。答がかえってくるまで、やや間を要した。
「死ぬさ」
 今度の声はすぐ近くで聞こえた、と思ったら、まだ息の上がったレッドが、上から覗き込んでいた。
「戻ろう。シルバー達が心配してるみたいだ」
 その言葉を怪訝に思って起き上がったグリーンに、レッドはある一方向を指でさししめした。顔を向けた先には、シルバーのニューラが佇んでいた。妙に取り澄まして、何もかも心得ているような顔をして、行儀良くその場で待っていた。
 立ち上がったふたりはそれぞれに振り返って見た。先ほどまで熱烈なバトルが繰り広げられていた雪原は、今はひっそりと静まり返っている。西日が差しかかり、暗い影も迫り上がりつつある、雪の丘陵。その紙のように白いふちを滑る、紫の影や橙の光がだんだんに色を変えてゆく。しみひとつなかったまっさらな雪原はそこらじゅう荒らされ、足跡や、掘り返した跡や、溶けた跡などの弾痕が、分厚い雪の層を抉って大地を剥き出しにしていた。それでも、氷の粒のひとつひとつは、太陽の熱に表面を溶かされては光る。地面を厚く覆い尽くす、無数の粒はそれぞれに潤み、一体となってきらきら輝く。その光、その無数の光線を、佇むふたりの目は受け止め、解析し、感覚する。何もかも、変わらないまま。
 戻ろう、とレッドが言った。
「陽が沈むと、戻れなくなるから」
 しずしずと歩を進めるニューラを先導に、ふたりは歩き出した。歩きながら、グリーンは、自分が柄にもなく沈んだ心持ちであることに気付き、また、先ほどのレッドの声は妙に寂しそうだったかもしれない、と思い、打ち消した。気分が平静でないときは、正気の判断など望むべくもない。憶測などしないに限る、と彼は軽くかぶりを振った。
「……あいつら、何喋ってるのかな」
 ふとレッドが思いついたように口にした。おそらく、残して来たゴールドとシルバーのことだろうと思って、グリーンは、さあな、と応えた。喧嘩してないかなとレッドはなおも呟いた。グリーンは、ここに来るまでに見た、あの二人の意外にも仲のよさそうな姿を思い起こして、答えた。
「大丈夫だろう」
「だって、前に修行に行ったとき、ゴールドの奴、すっげえシルバーを目の敵にしてたんだ」
「何年前の話だ」
 グリーンは素っ気なく言った。二年も経過すれば、いろいろなことが変わるのは当たり前のことだ。二年前のあの日には、まさか、オーキド博士から図鑑を、ウツギ博士からポケモンを盗んだトレーナーと、一緒に修行をする日が来るなんて思いもしなかったし、ジムリーダーの公務をしていようとは予想もしなかった。バトルのある瞬間から次の瞬間には戦局ががらりと変化することを思えば、何かが変わり過ぎるにも十分な時間だ。
 すると、レッドは黙ったので、グリーンも口を閉じた。その沈黙に違和感を感じた。けれどもその正体が分からないまま、黙々と足を動かした。
 目的の洞穴が見えて来た頃に、レッドが口を開いた。
「……最近、俺さ。お前と何を話していいのか、分からなくなるときあるんだ」

 その言葉は、グリーンの違和感を見事に言い当てていた。
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