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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
2026年06月22日 (Mon)
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2013年10月26日 (Sat)
以前書いて放置していたシルバー→ゴールド連作を発掘したので。
やまもおちもない上に短いですが、これで完結です。


00 その訪れはとても静かだった。

 初夏、美しい午後。少し風の強い日、シロガネ山のふもと。七月の細い雲の流れる空、揺れる若葉の間、陽光がきらきら溢れる森の中。苔むした土の匂い、遠くせせらぎの音、鳥の声。
 彼は声を上げて泣いた。樹海の奥深く、世界のどこにも届かぬ声と知りながら。俺だけが聞いていた。その悲しみを、怒りを。彼の声のすべてを。ただ見ていた。聴いていた。それだけだった。
 暫くして彼は泣き止んだ。ぐったりと死んだようにその場に蹲り、そして立ち上がる。俺に、付き合わせて悪かったな、と言う。傷つけられた笑顔で。腫れた目で。
 そのとき、俺は、彼が好きなのだと思った。けれどその気持ちに蓋をした。目を閉じた。

 目蓋を開けたら、きっと彼はもういない。


01 好きだと告げたら、どんな顔をするだろう。

 最近、そんなことをよく考える。ひとりでいるときも、誰かと一緒のときも、ふと想像する。慌てるだろうか、それとも男なんかに興味はねえと言われるだろうか。それとも言葉の真意に気付かず、当たり前だろダチなんだからと笑うだろうか。それはないなと考えを打ち消した。奴は無神経なようでいて、人の心の機微には敏い。では、冗談だろ、と信じ難いような顔で言われるだろうか。拒まれるより、それが一番堪えるだろう。
 あれこれと想像ばかりが先走るが、告げるつもりは毛頭ない。望み薄、というか限りなくゼロだということは分かっている。告げるか告げまいか迷う必要もなく、気持ちは楽だった。


02 目を瞑って記憶を辿り、痛みを寝かしつける。

 遠い昔のことに思いを馳せるようにしている。奴が隣にいるときは。並んで歩いていても、奴は女と見れば悪びれもせずに声をかけるのが常だから。奴が女を口説く、その度、胸が痛む。期待など持つだけ無駄だと、分かってしまう。いつかは奴も俺でない誰かのものになるのだと、奴の仕草に、表情に、相手の女に。救いのない未来を見てしまう。
 痛みは微かだ。くっと心臓が締まる、それだけ。奴を知らなかった頃のことを、考える。姉さんと二人、各地を転々として暮らしていた頃のこと、仮面の男のもとで修行していた頃のこと、それよりもっと前のこと。思えば思うほど心は安らいだ。
「何ボーッとしてんだよ」
 そして目覚める。奴の声にちくりと痛みがぶりかえすが、大丈夫。もう、何事もなかったように、憎まれ口のひとつも叩けるようになっている。


03 触れられて喜ぶ、そして悲しみに暮れる。

 一瞬、心臓が爆発するかと思った。お前顔色わるいな、と言われて額に手が触れてきた。触るな、と咄嗟にその手を振り払った。独りになれる場所に逃げ込んで、泣いた。
 奴に手酷い言葉を投げて逃げざるを得なかったことが、虚しかった。理不尽な仕打ちをしておきながら、奴の指先に触れられて今も歓喜している自分が、悲しかった。


04 ひとり、想いを零してみた。

 すきだ、と呟いてみた。誰もいない場所で、誰にも届かないほどの小さな声で。言葉はしっくりと胸に馴染み、腑に落ちた。やはり好きなのだ。
 これは世間一般で言う、恋なのだろうか。俺は奴と抱き合ったり、キスをしたいのだろうか。想像してみるが、わからない。したいしたくないで考えられることではないように思われた。おそらく悪い気はしないだろうが、ものすごく緊張するだろう。その緊張が良いものなのか悪いものなのかがわからない。想像の上では、嬉しいような気もするが、同時に堪らなく厭わしいものであるようにも感じられた。わからない、だが。
「すきだ」
 もう一度口にした言葉は、送り出した胃の腑を丸く満たすようだった。抱き合ったりはしたくないのかもしれない。キスはしたくないのかもしれない。それでも、好きなのは本当だ、と思った。


05 好きが溢れるまえに、少しでも遠くへ。

 奴が手の届く場所にいるだけで、少しずつ、気がふれていくのがわかる。このままでは、いつか耐えられなくなって、隠した想いを気取られるようなへまをしてしまいそうだ。
 この間奴を振り切って逃げてから、二回ほど連絡が来ていたが、こちらから連絡していない。奴には悪いと思ったが、もう一度でも声を聞いたら、顔を合わせたら、全てが壊れてしまうような気がして、連絡を取ることができないでいる。
 いっそこのまま、奴に繋がるものは全て消してしまって、時間が奴に関する記憶を洗い流してくれるのを待とうか。
 ふとそんな考えが頭を過るが、実行に移すことはできないでいる。なぜなら今の俺を作ったのは奴だ。俺の中から奴の要素が全て消えてしまえば、俺も俺のままではいられまい。それはそれで、奴と出会う前に戻るだけなのだから、大騒ぎするほどのことでもないだろうとも思うのだが、なぜだろう。
 奴を忘れることは、同時に今の俺をなくしてしまうことのように思えて、それがひどく寂しい。
 奴のことを覚えていようと思った。少しずつ離れていって、それでいて大切な記憶は心の底にしまい込み、傷つくことなく、思い出せるようになればいい。手の届くところにいなくても、記憶の中に奴がいるだけで、俺は俺でいられる。
 奴がいなくなっても、俺には俺がいる。そう思うと、身を滅ぼすほどの思慕も、少しは薄れた。
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