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pkmnsp 二次創作ブログ / CP雑食
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2014年03月23日 (Sun)
学パロ / ゴールド


 太陽と月みたいね、とゴールドとシルバーのことを評したのは、星のモチーフを好む超マジメ学級委員長、曰くクリスタルだった。背表紙に図書室のラベルの貼ってある文庫本を全身を弛緩させるような溜息とともに閉じて、放課後の教室でクリス先生の有り難い指導の元、(半強制的に)試験勉強につとめていたゴールドが聞いた言葉だ。文庫本の題名からはなにやらロマンティックなものを感じられ、顔を上げたクリスの目は軽く潤んでいたので、おそらく泣き物系の物語に感じ入ってしまって、その影響を多分に受けての一言だったのだろう。もっとも、クリスタル自身はひとりごとのつもりで、口に出した意識すら無かったのかもしれないが、その例えは今になっても、ふとした瞬間にゴールドの思考の端に浮かんでくるのである。
 実のところ、ゴールドはシルバーのことをよく知らない。
 確かに一番よくつるんでいるし、何かと互いに通ずるところがあって一緒にいて気楽なのは確かだった、けれども彼らは所詮それだけの関係に過ぎず、ゴールドは高校以前のシルバーの経歴や出身、家族のことについては何一つ知らないのだった。最も、シルバーとてゴールドのそういった身辺を知っているかどうかとすれば、それは微妙なところで(何かの拍子で母親のことくらいは話したことはあったかもしれない)、今更どうこう言うようなことではないはずなのだが。
 切っ掛けは分かっている。ついこのあいだ、理科室で酔いつぶれた次の日の放課後、ゴールドがレッドにお礼を言いにいったときに、レッドがさりげない調子で尋ねたのである。
「なあ、シルバーってマンション住まいなんだろ? なんで寮生なんだ?」
 それは純粋な疑問のようだったが、ゴールド自身も考えてもみなかったことで、彼はあっけにとられたまま、こう答えた。
「……そういやそうっスね……まあ、あいつ意外とズボラですし、寮のほうが気楽なんじゃないっスか」
 レッドはふーん、とたいして興味もなさそうに相槌を打ったきり、納得してくれたようだったが、その疑念はゴールドの中では深まるばかりだった。一見几帳面そうに見えるあの友人が、妙なところでズボラだというのは本当だったが、最大の問題として、学生寮は基本的に相部屋である。シルバーはたまに、気心の知れたゴールドでさえうっとおしく思っている素振りを見せることさえあったし、問題が何であれ一人でじっくりと考えたいような性格らしいのだ。そういった彼の特徴は前に述べただらしないところよりも性格の多くを占めているように思われているので、自宅住まいよりも学生寮を選ぶというのは、それだけでは考え難いことだった。
 思い返してみれば、疑念を深めることになった要因はそれだけではなかった。そもそもあの日、ゴールドが酒盛りをすることになったのは、たまたまシルバーを探していたら理科室へ向かっていったのを見た、という同級生の証言をもとに追いかけて行ったら、たまたまあの現場に出くわしたということだったのである。美人の先輩を狼狽しきったシルバーが何か諭しているような雰囲気だったのだが、酒盛りと気付かずに声をかけたゴールドに気付くと、シルバーは珍しく焦った表情をしていた、と思う。ゴールドといえばその先輩が美人だったことに気を取られて、調子にのって色々喋っているうちに、気付いたら……といった感じだった。そしてその翌日、学生寮の目覚まし時計の音に、シルバーと揃って目を覚まして、昨夜のことは真面目な友人には内緒にしようと、密約がかわされたのである。あの学級委員長に聞かれたらどんなお仕置きが待ってるか分かんねーかんな、と軽口を叩いたゴールドに対して、シルバーはものうげな表情で溜息混じりに、
「……それで済むならいいが……泣かせてしまうかもしれない」
と、つぶやいたのだった。そこまで考えたところで、冒頭のクリスの例えが、ふとゴールドの思考に浮かんで来たと、そういうわけだったのである。
(……俺が太陽で、あの野郎が月ねえ……確かに俺はあいつのことは全く見えてねえ……)
 だが、クリスタル、彼女がそう言うならおそらくそれは正しいのだ。彼女はゴールドやシルバーよりもずっと人を愛していて、よく見てもいるのだから、ゴールドの感覚で見通せないものも或は、彼女には見えているのかもしれなかった。
 いまゴールドには、ある恐ろしい予感が芽生え始めていた。すなわち、シルバーは現在たまたまゴールドやクリスタルと一緒にいるだけであって、本来ならば全くべつべつに、物理的にも、むろん精神的にも別れさせられている状態が正しいのかもしれない、という考えの兆しがあらわれていたのである。クリスがとても大事にしていて、休日は欠かさずつけている星のイヤリング、あれの代わりに左耳と右耳に、太陽と月をつけていてくれたならどうだろうか。そうすればきっとそんな馬鹿げた不安は、払拭されてしまうのに違いないのに……、とそこまで考えて、ゴールドはその考えを払拭するようにベッドから跳ね起きた。
 気を紛らわすために自販機まで散歩に出、ジュースを持って帰って来たころには、発作的な不安はほとんど消え失せていたが、それでも予感じみた不安感は、ゴールドの心の表層に、ほとんど見えないくらいの薄い膜を張るように漂っていたのだった。
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